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約400名のクリエイターが池袋に集結。 新巨大制作スタジオ「Studio One Base」が描くアニメ制作の未来 ー「創る人をつくる。創る所をつくる。」構想が目指す、持続可能な働き方 ー

2026.9.17

2026年9月、KADOKAWAの新たなアニメ制作拠点「Studio One Base(スタジオワンベース)」が完成しました。池袋・サンシャインシティ内に広がる約1400坪の巨大スタジオに集結するのは、約400名のクリエイターたちです。今回、KADOKAWAグループのアニメ制作スタジオ5社がこの新たな拠点に集うとともに、KADOKAWAでは2026年11月に、これら5社を統合した新会社「株式会社Studio One Base」を設立します。場所だけでなく、法人(組織)も完全に一つにすることで、制作体制の効率化を図るとともに、クリエイターが制作に専念できる環境の実現を目指します。


Studio One Base 内観

KADOKAWAはなぜ今、分散していたグループスタジオを一箇所に集約し、組織改革を含む大規模な制作体制の再編へと踏み切ったのでしょうか。スタジオ事業を統括する執行役員であり株式会社Studio One Baseの代表取締役社長でもある菊池剛とスタジオ事業局局長の田村淳一郎が、その狙いと未来像を語ります。


菊池剛さん 田村淳一郎さん

株式会社Studio One Base代表取締役社長菊池剛(左)とスタジオ事業局局長 田村淳一郎(右)

出版社が、なぜアニメ制作スタジオを持つのか

——アニメ・実写領域の制作体制を抜本的に強化する新構想「創る人をつくる。創る所をつくる。」がKADOKAWAで始動しました。今回開設した新たな制作拠点「Studio One Base」はその第一弾です。そもそもこの構想を掲げるに至った背景を教えてください。

菊池:もともと私たちはクリエイターと制作スタジオに対して継続的に投資を行なってきました。根底にあるのは、伸び続けるアニメ市場への挑戦とクリエイター不足への危機感です。

ご存知の通り、アニメ市場は成長トレンドが長く続いています。2014年に1兆6,371億円だった市場規模は、2024年には3兆8,407億円まで拡大。とりわけ海外市場の占める割合は年々大きくなっていて、2024年は前年比126%の2兆1,702億円に達しています。コロナ禍を境にNetflixやAmazon、Disneyなどの配信サービスが深く浸透するに伴って、日本のアニメ作品も世界中で流通するようになったのです。

こうした市場環境の中、年間約6,000のIPを生み出すKADOKAWAでは、アニメ事業をメディアミックスの中核の一つと位置づけており、現在は年間50~60作品ものアニメ企画・製作を手掛けています。このメディアミックスの効果を最大化するには、新刊の発売時期に合わせてアニメ化するなど、タイミングのコントロールが欠かせません。しかし、原作の盛り上がりに合わせてシームレスにアニメ化を実行しようとしても、制作ラインを外部に頼り切っている状態ではなかなか計画通りに立ち上がらない。

そこで私たちが挑戦したのが、自前でアニメ制作スタジオを持つことでした。2018年のENGI設立に始まり、2019年にはキネマシトラスをグループ会社化。その後は、2021年のStudio KADAN設立、2023年のレイジングブル子会社化、2024年のベルノックスフィルムズ設立と動画工房の子会社化、2025年のチップチューン子会社化と続きます。


菊池さん

田村:こうした動きの一方、私たちはクリエイター不足というアニメ業界の大きな課題にぶつかりました。この業界では、4年以内に約25%、8年以内に約68%の若手が離職する(※)と言われています。今ではだいぶ改善されていますが、私たちがスタジオ運営に乗り出した当時は長時間労働と低賃金が業界で常態化していました。
※出典:日本総合研究所「わが国アニメ産業の現状と課題」(2024年)

菊池:どれだけ魅力的なIPを持ち、優れたアニメ企画を立てても、それを映像として形にできる現場のクリエイターがいなければ、KADOKAWAが重視するメディアミックス自体が成立しなくなってしまう。彼らが腰を据えて働ける安定した職場を作ることが不可欠だと判断し、自前のスタジオを拡大する中で労働時間の削減と、フリーランス文化が根強いアニメ業界の中でクリエイターの正社員化を積極的に進めてきたのです。

おかげさまで正社員比率は順調に伸びていて、現在は業界トップクラス。労働時間についても、繁忙期を除き、20時には誰もスタジオにいない状況を実現しています。最近では、グループのアニメ制作スタジオが合同で行う採用活動にも力を入れていて、2025年の応募者数は前年比で増加しています。「KADOKAWAグループの正社員として働く」という安心感が本人や親御さん、学校の先生などに響いたのだと思います。

田村:KADOKAWAではこうした取り組みを今後さらに強化すべく、「創る人をつくる。創る所をつくる。」という構想を始動させました。Studio One Baseはまさにそれを象徴する拠点です。


田村さん

拠点の集約が生み出す、効率化とシナジー

——Studio One Baseの開設および新会社の設立にあたって、ENGI、Studio KADAN、レイジングブル、ベルノックスフィルムズ、チップチューンの5社が一つの法人として統合し、一箇所に集まります。組織と場所を完全に一つにする、この大きな決断にはどのような狙いがあるのでしょうか?

菊池:以前からクリエイターが誇りを持てる職場環境を実現したいと私たちは考えていました。その意味で設備の整った働きやすいオフィスを用意するのはとても大事なことです。ピクサーやディズニーなど海外の優れたスタジオはどこも素敵な職場が用意されていて、一歩足を踏み入れただけでワクワクしてくる。どのクリエイターも気持ち良さそうに働いているんです。Studio One Baseもそういう場所を目指していきたいなと。

田村:その上で業務の効率化も大きな目的の一つです。実は、制作スタジオを拡大する中で拠点が分散してしまい、組織としての横の連携が取りづらくなっていました。例えば、あるスタジオがスケジュールで手一杯になっている時に、別スタジオのラインが空いていても、物理的に離れているとお互いの状況が見えず、わざわざ外部スタジオに高コストで発注してしまうような非効率が生じていたのです。

菊池:さらに言うと、これまではグループ会社とはいえ別法人だったため、「お互いの利益をどうするか」といった調整が生じたり、各社で家賃や光熱費などの条件がバラバラだったりする非効率もありました。今回、法人としても一つになり、同じ条件、同じ空間で制作に向き合うことで、真の意味での助け合いやシナジーが生まれ、生産効率も格段に向上すると考えています。


Studio One Base フロア

Studio One Baseはワンフロアの構成で同じ空間で顔が見える環境を作っている。これによりラインの空き状況も把握しやすくなり、グループ内での業務の調整がしやすくなる効果がある。無駄なコストを絞りつつ、生産効率の向上が期待できる。

さらに、各スタジオが制作に集中できるようバックオフィスの効率化も進めます。経理や管理のシステムは本社側で手厚くサポートし、クリエイターたちが制作に割ける時間をこれまで以上に確保できるようにします。長時間労働は避けなければいけない一方、アニメの制作現場では「あと一手」が映像のクオリティを大きく左右することが少なくありません。制作以外に費やす時間を減らせれば、QOLだけでなく、作品のクオリティも向上させることができるはずです。

——ただ、各スタジオにはそれぞれ個性があるかと思います。組織が統合することで、それぞれの良さは失われないでしょうか?

田村:その心配はしていません。組織としては一つにはなりますが、各スタジオが培ってきた「屋号(ブランド)」はそのまま残します。よくグループ内のスタジオメンバーに対しては「日本一仲の良いスタジオにしよう」とよく言っています。これはベタベタしようということではなく、各スタジオの状況をお互いに把握しつつ、いざという時には助け合える関係性をきちんと築いていこうという意味です。

Studio One Baseの開所で各スタジオの距離感は以前よりも近くなるとは思います。助け合う中でお互いにやり方を調整する必要は生じるかもしれませんが、彼らが持つ個性やカルチャーが失われないようにしていきます。方言をイメージしてみてください。意思疎通はできますが、各地方が培ってきた言葉の個性はきちんと残っていますよね。それと同じように、ベースであるアニメ制作では協力し合いながらも、個性を生かした作品作りは継続されます。この新たな環境の中で新たなシナジーが生まれることを期待しています。


ENGI Studio KADAN レイジングブル  ベルノックスフィルムズ チップチューン

Studio One Baseの開設にあたって、ENGI、Studio KADAN、レイジングブル、 ベルノックスフィルムズ、チップチューンの5社が統合し、ひとつの拠点に集まった

【コラム】創造の循環を生み出す「Studio One Base」の空間設計

Studio One Baseのオフィス空間は、「作業スペース」や「会議室」といった単なる部屋の役割(用途)で区切られているわけではありません。アニメーションが作られていく実際のプロセスに合わせて、オフィス全体を「没入」「調律」「共鳴」という3つのエリアに分けています。これにより、クリエイターが集中して創り、チームで整え、社内外とアイデアを交わすという「創造のサイクル」が自然とオフィス内で回るように設計されています。

没入(Focus):作品づくりに集中できるクリエイターエリア


クリエイターエリア

クリエイターが集中し、作品を制作するための空間。ブースは集中できるようダークトーンで統一され、デスクにはデジタルでの作画作業に適した特注デスク(奥行800mm)を採用しています。さらに長時間の前傾姿勢を支えるワークチェアや、モニターの反射を抑える間接照明を導入するなど、徹底したクリエイターファーストの環境が整えられています。

調律(Tuning):チームの連携を深めるスタッフラウンジ


スタッフラウンジ

さまざまな部署のクリエイターやスタッフが気軽に集まり、作品の方向性や進捗をすり合わせるための空間。日々の打ち合わせや情報共有をここで行うことで、アニメ制作がスムーズに進むようサポートします。

共鳴(Resonance):活気ある交流の拠点となるゲストラウンジ


ゲストラウンジ

Studio One Base内のメンバーだけでなく、社外のパートナーやゲストも自由に集まることが出来るラウンジ空間です。中央に置かれた大きなデスク「One Table」を囲んで、何気ない立ち話や交流から新しいアイデアが生まれ、次の作品へと繋がっていくような、活気ある交流の拠点をイメージしています。

「世界に誇るアニメシティ」へ。池袋の街が進化する

——Studio One Baseは池袋のサンシャインシティに入居することになりました。アニメ制作といえばJR中央線沿線というイメージも根強いですが、なぜ池袋だったのでしょうか?

菊池:一つは、キャパシティの問題です。約400名規模のクリエイターが快適に働ける広いフロアを確保できる場所は都内でも限られています。約2年間探し続ける中で出会ったのがサンシャインシティでした。

もう一つ、漫画やアニメを愛するカルチャーの存在です。確かに、JR中央線沿線にはアニメの制作スタジオが集まっていますが、豊島区にも手塚治虫先生をはじめとする漫画の巨匠たちが集った「トキワ荘」の歴史があります。また、池袋にはアニメ関連ショップが多く、街自体が非常に強い熱量で漫画やアニメを活かしたまちづくりを進めています。


IPのグッズ

Studio One Base内には、KADOKAWAが手がけたIPのグッズも飾られている

——これまでも「池袋ハロウィンコスプレフェス」やサンシャインシティでのイベント開催など、KADOKAWA、豊島区、サンシャインシティの三者は信頼関係を築いてきました。Studio One Baseが誕生することで、どのようなシナジーが生まれると考えていますか?

菊池:池袋はこれまで、アニメイト本店やグランドシネマサンシャイン、サンシャインシティ内のキャラクターショップや各種イベントなどを通じ、「観る・楽しむ・体験する」を提供するエンターテインメントの中心地として賑わってきました。そこにStudio One Baseが開設され、約400名のクリエイターや関係者が日常的に滞在することで、アニメを「創る・育てる・発信する」というクリエイションの機能が加わります。

田村:具体的には、豊島区やサンシャインシティと連携して、現場のクリエイターが講師を務めるセミナーや講習会などを実施することもできるのではないかと考えています。街としての魅力を発信するだけでなく、アニメファンやクリエイターを増やす場としても機能したら私たちも嬉しいです。

菊池:エンターテイメントとクリエイションが融合した「世界に誇るアニメシティ」へと池袋の街全体を進化させる。Studio One Baseがその推進力になれたらいいですね。

【地域からの期待の声】


集合写真

(右から2人目)東京都豊島区長 高際みゆき様
(一番右)株式会社サンシャインシティ 代表取締役 社長執行役員 脇英美様


東京都豊島区長 高際みゆき様

「アニメを生み出すクリエイターたちの『創る環境』が、新たな時代を迎えたのだと強く感じました。こんな素晴らしい場所ができるとは想像を超えています。ここで作られる作品がどんなに素晴らしくなるだろうかと、早くもワクワクしています。

これまでも我々豊島区は『池袋はマンガ・アニメの聖地』と言ってまいりましたが、今度はそこに『作り手』が集まってくださる。なんて最強なのかしらと思っています。

特に子どもたちはどの子もアニメーションが大好きです。だからこそ『どんな人が、どうやって作っているの?』という疑問に答えてあげられる機会になればと思いますし、アニメの仕事に就きたい中高生や大学生が、大先輩であるクリエイターの方と接点を持つ機会になればすごく嬉しいと思っています。

また、就労環境のいいお手本でもありますので、『働き手に優しい職場環境ってこういうところよ』という事業者への情報提供にも繋げていきたいです。色々な面で、作り手・働く場として来てくださるというのは本当にありがたいなと思っています」

株式会社サンシャインシティ 代表取締役 社長執行役員 脇英美様

「Studio One Baseの皆さま、ようこそ!大変お待ちしておりました。
クリエイターの皆さまに喜んでいただけるこれほど素晴らしい施設が誕生したことを、心より嬉しく思います。

サンシャインシティには、アニメ作品に関連したショップやイベントなどで、作品を楽しんでいるお客さまの姿を身近で見てもらえる環境があります。その熱気を肌で感じることで、この場所からまた新しいものが生まれていくのではないかとワクワクしています。

池袋のまちづくりのコンセプトに『共に創り、共に奏でる』というフレーズがあります。今回、Studio One Baseさんにこの街へ加わっていただいたことで、ここからさらに凄い『奏で方』ができるのではないかと、期待以外の何物でもありません」



アニメファンが沸き立つスタジオにしたい

——今後、Studio One Baseがクリエイター育成やIPビジネスの拡大にどう貢献していくのか。展望を教えてください。

田村:私たちとしては、アニメ業界におけるクリエイター不足への危機感は変わらず強いです。持続可能な安定した制作基盤を築くため、2026年4月には若手に特化した育成・制作一体型の新スタジオ「KADOKAWAクリエイターズ」を設立しました。

従来の採用枠からこぼれてしまったクリエイターを、長期目線で戦力へと育て上げる新しい仕組みの制作スタジオです。KADOKAWAグループ作品のアニメ制作を担いつつ、熟練のクリエイターが日常業務の中で若手に技術継承を行います。移転集約によりStudio One Baseと近くなるので、育成体制をさらに強化していく予定です。

菊池:KADOKAWAが推し進めるメディアミックスという観点では、企画を担うアニメ事業局と制作を担う私たちスタジオ事業局、この両輪がうまく噛み合っていかなければなりません。アニメ事業局が狙う最適なタイミングで、最高のクオリティの映像を供給する。Studio One Baseの開設を機に、この体制をさらに強化していくことが、私たちが達成すべき第一ミッションだと考えています。

また、各スタジオのブランド力も強化していかなければなりません。実は海外のアニメエキスポでは、日本の有名アニメスタジオのロゴがクレジットに表示されただけで会場が沸き立ちます。優れたスタジオは着実にブランド化している。こういったファンの反応を見て、「このスタジオが作る作品なら間違いない」とバイヤーたちも作品を買い付けているのです。私たちのスタジオもその域に達したいと思っています。

将来的には、Studio One Base発のオリジナル企画も目指したいです。昨今は原作漫画のアニメ化がほとんどを占めていますが、振り返れば『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』などスタジオ主導の大ヒットアニメも作られています。こういった作品はアニメクリエイターの夢でもある。KADOKAWAとして、これを叶える機会をいつか提供できたらいいなと考えています。


田村さん 菊池さん

——アニメ業界でもAIなどの最新デジタルテクノロジーの波が押し寄せていますが、その点についてはいかがでしょうか?

菊池:現在巷を賑わしている生成AIだけではなく、ものづくりの管理や制作の補助をしてくれるものなど、さまざまな技術を調査しています。もちろん、水面下で技術テストはずっと続けており、来たるべきテクノロジーのアップデートに向けた準備は進めています。しかし、日本のアニメーションには、独自の「タメ」や間合いといったアナログ的な職人技が深く根付いています。これは海外が容易に真似できるものではありません。技術革新を恐れずにAIなどを補助的なツールとして取り入れつつも、人間だからこそ表現できるアナログな面白さを大切にしていく。その両立こそが、今後のアニメ業界を生き抜く鍵になると考えています。

——最後に、これからのアニメ産業を担うクリエイターの方々にメッセージをお願いします。

田村:働きやすさという点で、KADOKAWAグループのスタジオは業界でもトップクラスの環境が整っていると自負しています。クリエイターたちにここで安心して腕を磨いてもらい、スタジオとして日本一のクオリティを目指していくのが私たちのロードマップです。

スタジオ自体もこれからさらに飛躍していくフェーズだからこそ、ここで働く人間も組織と一緒に大きく成長していけるはず。高い熱量と一体感を持ってアニメ業界全体を盛り上げ、この場所から最高の作品を生み出していきたいと思っています。


田村さん 菊池さん

◎参考記事・関連情報

【K-Insight】

・5人から1,000人体制へ。ハルヒの大ヒット、9社合併――アニメ事業20年の軌跡と「成長の転換点」
https://group.kadokawa.co.jp/k-insight/ki03439.html

・「ライツ」と「スタジオ」の両輪で挑むアニメ事業成長への展望
https://group.kadokawa.co.jp/k-insight/ki04938.html

【ニュースリリース】
・制作体制の改革構想「創る人をつくる。創る所をつくる。」第3弾 KADOKAWAグループ傘下のアニメ制作スタジオ5社を統合 新スタジオ「株式会社Studio One Base」を設立
https://group.kadokawa.co.jp/information/news_release/2026090801.html

【採用情報】
・KADOKAWAグループアニメスタジオ新卒採用
https://group.kadokawa.co.jp/recruit/anime-studio/

※本記事は、2026年9月時点の情報を基に作成しています



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