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「ライツ」と「スタジオ」の両輪で挑むアニメ事業成長への展望

2026.4.06

グローバルなアニメ市場の拡大とともに成長を続ける、KADOKAWAグループのアニメ事業。その収益性や生産性をさらに高めるべく、ライセンス管理を担うグローバルライツ局が2023年に、制作スタジオを統括するスタジオ事業局が2025年にそれぞれ新設されました。

執行役として各局を管掌する、Chief Anime Officer(CAO)の工藤大丈さんと、Chief Studio Officer(CSO)の菊池剛さんに、KADOKAWAグループのアニメ事業の成長の歩みや今後の展望について話を聞きました。本記事は前後編でお届けします。後編では、アニメ事業の今後の発展を支える両輪となる「ライツ事業」と「制作体制の強化」について迫ります。

※本記事は、統合報告書2025の特集として菊池さんと工藤さんとの対談形式で掲載した内容(取材は2025年7月)を、特集に未収録のトピックや最新の情報などを追加して、再構成したものです。

配信を超える2.2兆円グッズ市場へのライツ戦略

活況を呈するアニメ配信市場。その存在感をさらに上回る規模を持つのがアニメのグッズ市場です。パロットアナリティクスのレポートによると、2023年の日本アニメの配信売上高は55億ドル(約8,500億円)であるのに対し、グッズの世界売上高は143億ドル(約2兆2,000億円)とされます。

※Parrot Analytics「Japanese Anime Captured $19.8 Billion in 2023 Global Revenue, Cementing Japan’s Role as a Global Entertainment Leader」
https://www.parrotanalytics.com/announcements/japanese-anime-captured-dollar198-billion-in-2023-global-revenue-cementing-japans-role-as-a-global-entertainment-leader/

KADOKAWAグループは、社内のライツ事業を統合したグローバルライツ局の立ち上げによって、国内外のIPのライツを一体化して収益の最大化を図っていく仕組み作りを推進しています。


工藤大丈さん

工藤:海外市場の売上は配信権販売のシェアが大きいのが現状なので、今後の伸びしろとして、展開地域の拡大と並行して推進するライセンス事業やグッズなど自社で展開するMD事業に、非常に期待しています。リアルのグッズだけでなく、私たちが「デジタル商品化権」と呼んでいる、ゲームとのコラボなども大切な要素です。
IPの戦略的なメディアミックス展開を実現できるのが、IPホルダーならではの大きな強み。国内で蓄積した成功事例のノウハウをグローバルに応用する取り組みを加速させていきます。

直近の具体的な作品事例では『【推しの子】』や『ダンジョン飯』のヒットによって海外からも急速に商品化の依頼が増えているので、海外と折衝できるグローバル人材の獲得にも力を入れています。


【推しの子】

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

また、シリーズ累計550万部を突破し、2026年10月からアニメ放送も決まっている大人気絵本「パンどろぼう」シリーズにおいては「パンどろぼう版権課」という部署を設置して、MDを含めたグローバル・メディアミックスを進めているところです。これは、伝統的に玩具メーカーが差配してきたキッズIP分野で、KADOKAWAがイニシアティブをとって進める野心的な取り組みでもあります。

出版機能だけでなく、グッズなどメディアミックス展開ができる力を持っている海外拠点には、積極的にその独自性を発揮させていきたいと考えています。
グローバルライツ局を新設してから、ライセンスの成長戦略もいろいろと模索しており、自社の海外拠点を中心に『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』で原作のグッズとアニメのグッズを並行運用するトライアルを行うなどして、各種のマーケティングデータ蓄積を進めています。

菊池:アニメ市場が拡大しファンの裾野が広がったことで、グッズ市場も巨大化するだけでなく、売れ方にも変化が生じました。作品がヒットして認知度が高まるにつれ、作家の高額なイラスト集のようなコアなファン向け商品よりも、一般層向けの文具のようなライセンスグッズの売れ行きが伸びるような傾向です。
市場の拡大にともなうビジネス環境の変化は、業界を志望する若い人たちの傾向からも実感します。「絵は描けないけれどアニメに関わりたい」という学生に人気なのがライツ部門や宣伝部門で、制作プロデューサー希望者が多かった昔とは様変わりです。


「パンどろぼう」コラボ

2025年末には「パンどろぼう」が台湾最大級のスーパーマーケットとコラボ。
海外でのライセンス展開も拡大している。

制作体制強化は「第2フェーズ」へ。制作環境の最適化と投資の最大化

海外の大手配信プラットフォーマーが直接アニメスタジオに制作を依頼するケースが増えています。それに対応してアニメ業界では、大手の製作会社などが自社内の制作機能を強化し、工程やコスト管理の徹底に取り組むような動きが加速しています。

KADOKAWAグループは、制作クオリティの確保や生産性向上のため、アニメスタジオの新設やM&A、アライアンスなどで、制作体制の拡充を継続的に推進しており、2028年3月期には内製タイトル数20本を目指しています。グループ内のアニメ制作スタジオは、現在7社まで増加。スタジオそれぞれの強みや、制作フローにおけるあらゆるノウハウ・技術力を有しています。

また、2025年4月には実写映像事業を含むグループのスタジオを統括する「スタジオ事業局」を新設。各スタジオの管理機能の集約、共通の制作管理システムやITツールの導入、人材採用・育成体制の構築を推進して効率化を図り、クリエイターが業務に注力できる環境を整えます。

工藤: かつて四半期で放映、配信されるアニメは全体で40~50本の水準でしたが、今では70本ほどに増えています。アニメ産業の隆盛自体はもちろん喜ばしいことですが、グローバルな競争下で参入プレイヤーが増えたことで、人件費相場や労働条件が変化するなど制作コストの高騰が起きており、利益を確保する出口戦略と生産性の向上が、かつてなくシビアに求められているのが現状の課題です。


菊池剛さん

菊池:グループ内のスタジオは現在7社となり、かなり充実してきました。スタジオそれぞれの得意領域を活かしながら制作力向上を推進するのに加え、現在、各社の管理業務、バックオフィス機能を統一し、スタジオ事業局に集約することによる生産性向上などを進めています。業務効率や環境の改善などで管理コストを圧縮しながら高騰する制作コストにメリハリをつけ、効率化できた分を制作への投資に回していくというのが、制作体制強化の第2フェーズです。

工藤:それぞれ異なる専門領域を持つスタジオが揃うことで、KADOKAWAグループの制作能力やクオリティの向上が進んでいます。たとえば、2025年に新しく加わったチップチューンは、アニメ制作における「撮影」と「CG」の工程に強みを持っています。

さらに、制作体制の充実は、ライツ部門の戦略の多様化にも好影響をもたらします。たとえば「他のアニメスタジオが本編の制作にかかりきりでグッズ対応に手が回らない時に、ちびキャラ作成が得意なENGIがグッズデザインをサポートする」といったかたちでグループの相乗効果も発揮できています。

クリエイターが尊重される未来を。日本のアニメ産業を支える人材育成の決意

日本政府はコンテンツ産業を基幹産業のひとつと位置づけ、2033年の海外売上高を2023年の3倍以上となる20兆円へ拡大する目標を掲げています。

その達成に向けて、中核的な役割を担うとされるのがアニメ分野です。同時に、喫緊の課題となっているのが人材育成です。日本総研の試算によれば、政府目標を実現するためには約30,000人のアニメ制作者が必要とされる一方、2030年には現在の水準から約1割減少する(2019年の6,211人→2030年には5,642人)と予測されています。アニメーターの慢性的な不足という構造的問題の主因のひとつに挙げられるのが、厳しい労働条件や収入の不安定さといった待遇改善の課題です。

※経済産業省「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」2025.6.24
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/entertainment_creative/pdf/20250624_1.pdf
※日本総研「わが国のアニメ産業における供給面の課題」(2025)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/15608.pdf

菊池:先ほど「アニメ事業を志望する若い人たちに宣伝部門やライツ部門が人気」という話をしましたが、その一方で、アニメーターは依然として不足しています。市場の拡大や隆盛の蔭で、「ものづくり」というアニメの根幹部分が衰退に瀕しているのではないかという危機感を抱きました。もっと作り手が尊重される環境を整備するためにも、スタジオ事業局を新設しました。

米国などと比較しても、日本におけるクリエイターの地位は不当に過小評価されていると感じています。それは業界全体の課題ですが、アニメ制作を志す有為な人材が安心して働ける環境整備に、KADOKAWAグループが率先して取り組みたいと考えています。

また、アニメづくりは、実際に絵を描くクリエイターに注目が集まりがちですが、人・お金・時間を管理する「制作進行」の人材が極めて重要です。このプロジェクトマネジメント能力こそが事業の損益に直結する生命線であり、KADOKAWAグループはもちろん、業界全体の将来のためにも、優秀なマネジメント人材を育てることにも全力を注いでいきたいと考えています。


KADOKAWAグループアニメスタジオ 合同リクルート

KADOKAWAグループは2025年に初めての試みとして、アニメ制作スタジオの合同リクルートを開催。47名の内定者が決定し、2026年4月にKADOKAWAグループのアニメ制作スタジオの一員となります。好評を受けて、2026年2月より第2回の合同リクルートが始まっています。

“ずっとアニメで生きていこう。” 
第2回 KADOKAWAアニメ制作スタジオ 合同リクルートを開催
―参加スタジオ6社、採用60名、研修体制をさらに強化!―
https://group.kadokawa.co.jp/information/news_release/2026013002.html

菊池:合同リクルートは、大きな共感をいただくことができました。アニメ制作会社に入社して夢を実現しようとする若い人に対してさまざまな選択肢を提示できたことに加え、KADOKAWAグループというブランドのバリューで保護者の方もご安心いただくという点でも、意義ある取り組みだったという手応えを感じています。

さらに、私たちはこの流れを加速させ、今年からアニメ・実写領域の制作体制を抜本的に強化する新構想「創る人をつくる。創る所をつくる。」を始動しました。

その第一弾として、グループのアニメ制作スタジオを集約し、池袋・サンシャインシティ内に総計1400坪の新たな制作拠点「Studio One Base(読み:スタジオ ワン ベース)」を2026年秋(予定)に開設します。さらに、若手クリエイターの教育・制作が一体となった新スタジオ「KADOKAWAクリエイターズ」を3月に設立しました。

今後も、バンタンなどグループの教育事業との連携を強化することで、クリエイター人材の創出・育成という社会課題に取り組んでいきます。

次世代を担う「創る人」を育て、彼らが才能を最大限に発揮できる最高の「創る所」をつくる。
KADOKAWAグループはもちろん、日本のコンテンツ産業の未来に貢献していきます。

若手に特化した育成・制作一体型の新アニメスタジオ「KADOKAWAクリエイターズ」設立
~若手人材を社員採用し、プロの現場でクリエイターへ育成。
アニメ業界の課題解決へ、持続可能な制作基盤を構築~ 
制作体制の改革構想「創る人をつくる。創る所をつくる。」第2弾
https://group.kadokawa.co.jp/information/news_release/2026033101.html

※前編はこちら

※本記事は、2026年3月時点の情報を基に作成しています



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