「好き」の熱量が、世界を動かす事業になる。新卒1年目の起案から生まれた「KADOMIX」の奇跡と軌跡── 若手の情熱と伴走する、KADOKAWAの挑戦文化
KADOKAWAの人気作品のキャラクターたちを、新進気鋭の外部イラストレーターが描き下ろし、まったく新しい魅力を持ったオリジナルグッズとして世界へ向けて展開する新規事業が「KADOMIX」(読み方:カドミックス)です。 2025年末に渋谷TSUTAYAで開催されたライトノベルのイベント「ライトノベル展2025」で初めてグッズ販売を実施した際には、『スレイヤーズ』などの人気作品のグッズが大反響を呼びました。さらに、現在予約を受け付けている第4弾『デート・ア・ライブ』も大きな注目を集めるなど、シリーズ展開へのファンの期待は着実に高まっています。
実はこの新規事業、ひとりの「新入社員の純粋な願い」から始まったのです。
現在、メディアミックス推進部など3部署を兼務しながらこの事業を牽引する胡桃(くるみ)彩乃さんは、新卒入社1年目の秋に社内の新規事業コンペティション「GAP(*1)」にこのKADOMIXのアイデアを起案しました。右も左もわからない若手社員の「やってみたい」という小さな火種は、いかにして周囲を巻き込み、大きなビジネスへと育っていったのでしょうか。
そこには、利益だけではない「作品やファンへの愛」と、若手の情熱に本気で伴走するKADOKAWAの組織風土がありました。事業化に至るまでの葛藤と、それを打ち破ったブレイクスルーの舞台裏に迫ります。
(*1) GAP(グローバル・ビジネス・アクセラレーション・プログラム): KADOKAWAが実施している、年次や所属に関係なく社員の新しいビジネスアイデアを募集し、事業化を力強く後押しする社内コンペティション。
胡桃 彩乃(くるみ あやの):(株)KADOKAWAメディアミックス推進部 企画調整1課・3課、MD事業局 MD企画部 ライトノベルMD制作課を兼務し、新卒1年目で自ら起案した新規事業「KADOMIX」を牽引している。
海を越えて感じた無力感。「日本のファンと同じ喜びを届けたい」
「KADOMIX」という事業の原点。それは、胡桃さんが学生時代に経験したスペインへの留学の日々に遡ります。
異国の地で胡桃さんが「日本人だ」と伝えると、言葉の壁を越えて、現地の若者たちとアニメや漫画の話題でたちまち笑顔になれました。日本のエンターテインメントが世界共通の言語であることを肌で感じ、誇らしく思った一方、胡桃さんはある「見過ごせない課題」にも直面したのです。
それは、「日本のファンが当たり前のように楽しんでいるグッズが、彼らの手元には届いていない」という事実でした。現地で流通している公式商品はごくわずか。大好きな作品のグッズが欲しくても、それが正規品かどうかもわからない劣悪な“海賊版”(*2)に手を伸ばさざるを得ない海外ファンの姿があったのです。
入社・配属から数か月が経った頃、アニメ業界やIPビジネスの仕組みが少しずつわかり始めてきたタイミングで、同期から「GAP」という新規事業コンペティションの存在を教えられます。テーマが「海外展開」だと知った瞬間、スペインでの悔しい記憶が蘇りました。当時は企画書すら書いた経験がなく、本人にとっても「まずは経験を積むための肩慣らし」のつもりでの挑戦だったといいます。
(*2) 海賊版: 著作権者や制作会社に許諾を得ずに、無許可で複製・販売される非公式な商品のこと。権利者に正当な利益が還元されないため、クリエイターの未来を奪う深刻な問題となっている。
── 新卒1年目でGAPに企画を出した際、その胸の内にあった「想い」は何だったのでしょうか?
胡桃さん: 「日本のファンが享受できている価値を、海外のファンにも同じように届けられる状態をつくりたい」。その強い想いだけでした。海外で海賊版が横行しているのを目の当たりにして、「どうしてこの問題は解決できないのだろう」とずっと悔しく感じていたんです。 私がKADOKAWAを志望したのも、ただ作品を届けるだけでなく、グッズやサービスといったすべての体験を、世界中のファンに届けたかったからです。
── 新入社員の企画が実際に採択された瞬間は、どのようなお気持ちでしたか?
胡桃さん: まず「びっくりした」というのが正直なところです。それと同時に、「本当に私なんかで務まるのだろうか」というプレッシャーが押し寄せてきました。採択後はメンバーとワークショップを重ね、最終的に社長の判断を仰ぐというプロセスが待っていたからです。 でもそれ以上に、入社してわずか半年の新入社員のアイデアを笑わずに受け止め、これほどの挑戦の舞台を与えてくれる会社に対して、深い感謝と「やるしかない」という覚悟が芽生えました。
コテンパンに砕かれた自信。救ってくれた「原作を任される立場」という言葉
見事コンペを通過したとはいえ、そこからが本当の試練でした。KADOKAWAのような巨大エンタメ企業では、ひとつの作品を展開するにも、出版、ライツ(権利)、グッズ製作など、各部署が高度に専門化されています。ワークショップでは各部署のエキスパートが集結したものの、「自分の専門領域はわかるが、全体を通した時にどこにボトルネックがあるのかわからない」という、大企業ならではの複雑なパズルを解くような状態からのスタートだったといいます。
胡桃さんは必死に食らいつきました。他社の類似事例を調べ上げ、海外で海賊版が流通することによる莫大な被害額のデータを収集し、「これをやらないことの損失」を客観的な根拠として経営陣に提示したのです。
── 最終的に社長へプレゼンをするというのは、新卒1年目としてはかなりの重圧だったのではないですか?
胡桃さん: 実は社長へのプレゼン前に、各部署の課長や部長、局長の方々に事前にご相談する機会があったんです。そこで各部署のエキスパートである先輩方から、プロの視点で鋭いフィードバックをいただき、企画を徹底的にブラッシュアップできました。あらゆる懸念点を一緒に洗い出していただいたからこそ、社長への最終プレゼンでは「完成度の高い企画になっている」という確かな手応えがあり、実はそれほど緊張しなかったんです。
しかし、事業化が決定した入社2年目、彼女はさらに高い壁に直面します。複雑な権利関係が絡むプロジェクトを実際に動かすため、社内のさまざまな部署へ理解を求めて回る中で、経験不足からくる見通しの甘さを再び厳しく指摘されたのです。
壁にぶつかっていたこの状況で、胡桃さんを力強く支えたのは、所属部署の部長をはじめとする先輩社員たちの存在でした。部長は本来の業務範囲を越え、出版側の関係各所との橋渡し役を自ら買って出てくれました。KADOKAWAには、若手社員の情熱を「組織の力」で守り、育てる文化が根付いていたのです。
── 各部署への折衝のなかで、一番心が折れそうになった壁と、それをどう乗り越えたかを教えてください。
胡桃さん: 企画自体が複雑なため、他部署の初見の方にいかにわかりやすく伝えるかが最大の壁でした。当初の私は「丁寧に説明すればきっとわかってくれる」と思い込んでいたのですが、多角的な視点が欠けており、厳しいご指摘をいただくこともありました。解決策を模索する中で、先輩からかけられた「原作を任せてもらう立場であることを、絶対に忘れてはいけないよ」という言葉にはっとさせられました。 当時の私は、コンペを通すことや、ビジネスとしていかに収益を生み出すかという視点ばかりに囚われていたんです。でも、本当に重要なのは、この事業が作品の未来をどう広げ、ファンの方々にどう喜んでいただけるかまでを深く想像し、配慮すること。「ただお金を生み出すのではなく、作品に最大限の価値を還元する」。エンタメ企業として最も大切なその原点に立ち返らせてもらったことで、企画の本当のブレイクスルーが起きました。
誰も傷つかない「夢のコラボ」。SNSを通じてファンと共創する熱狂
こうして産声を上げた「KADOMIX」は、KADOKAWAの宝である原作IPのキャラクターを、まったく別の新進気鋭の豪華イラストレーター陣が描き下ろすという、ファンにとってはたまらない「夢の企画」となりました。
第1弾の『スレイヤーズ』では、もとから作品の長年のファンでSNSで同作品のファンアートを熱心に発信しているようなイラストレーターを起用しました。自分が応援しているクリエイターが、大好きな別作品のキャラクターを描き下ろすという奇跡のコラボレーションは、ファンの間で大きな反響を呼んだのです。
事業が本格化した現在、胡桃さんは企画の進行だけでなく、公式SNSの運用も自ら手がけています。ファンの生の声を徹底的に拾い上げ、時には「この作品でもやってほしかった」「別のイラストレーターのバージョンも見てみたい」といった要望にも目を背けずに、次の企画の検討材料として真っ向から受け止めているのです。
── 二次創作(*3)とも近いアプローチですが、KADOKAWAが「公式」としてこれを行う意義はどこにあるのでしょうか?
胡桃さん:様々なクリエイター様の表現力を通じて、キャラクターの『新たな魅力や可能性』を引き出し、それを公式の形でファンの方々にお届けできることこそが最大の意義です。 公式の監修を経ているため、ファンの方々は「公式コラボグッズ」として安心してご購入いただけます。心置きなく正規品を選び、愛する作品にしっかりとお金を還元して、大好きなクリエイターを応援できる。誰一人として傷つかず、作品のプラスになる。それが本当に嬉しいんです。
(*3)二次創作: 既存の漫画やアニメなどの作品を利用して、ファンなどが作品への愛と独自の解釈を加えて新たに制作した派生作品のこと
── 原作の世界観を守りつつ、新しい表現を拡張するための「監修」は非常に難しそうですが。
胡桃さん: イラストレーターの方々には、「キャラクターの性格や服装といった原作の絶対的なルールは守ってほしい」とお願いしています。でも、顔の表情や絵柄のタッチは、そのクリエイターならではの個性を思い切り発揮していただきたいんです。 時には先生の「手癖」で原作とは異なる体形でキャラクターが描かれている場合などに、原作の体型に合わせていただくよう調整をお願いすることもありますが、キャラクターらしさと作風が最高に輝くバランスを見つける作業は、とても丁寧に行っています。
挑戦は国境を越える。自分の「好き」を極められる場所
現在、胡桃さんはメディアミックス推進部の企画調整1課・3課、そしてMD事業局のMD企画部ライトノベルMD制作課という3つの部署を駆け回りながら、KADOMIXの事業を牽引しています。
彼女の「海外のファンに届けたい」という願いは今、越境EC(*4)などを通じて北米、香港、タイへと広がり、グローバル展開を現実のものにしています。さらに、第4弾となる『デート・ア・ライブ』では、中国語圏で絶大な人気を持つイラストレーターを起用しました。KADOKAWAの海外拠点である「天聞角川」などを通じて現地との連携を深め、新たに中国本土という巨大市場での商品展開も予定しています。グループの総合力を活かした確実なグローバルスキームが構築されつつあるのです。
新卒1年目の小さな情熱が、世界中のファンを笑顔にするビジネスへと育ちつつあります。
(*4)越境EC: インターネットを通じて、国境を越えて商品を販売・購入するオンラインショップの仕組み。世界中のファンへダイレクトに商品を届ける鍵となる。
── これだけの事業を牽引する中での「やりがい」と、未来の仲間に向けたメッセージをお願いします。
胡桃さん: 一番報われる瞬間は、イラストレーターの方々から「大好きな作品を描けて本当に光栄でした」と声をかけていただいた時ですね。そして、SNSでイラストを公開するたびに、画面の向こうでファンの方々が熱狂し、ワクワクしてくださるのを感じられることは、何よりの喜びです。誰もやってこなかった未知の領域を、自分たちの手で切り開いている。その手応えが、今の私を突き動かしています。
新卒で入社した時に「KADOKAWAは自分の『好き』を伸ばせる環境だ」と言われたのですが、それは間違っていませんでした。たとえ新卒であっても、面白い企画には裁量を預け、最終決定権を委ねてくれる器の大きさがあります。そして、迷った時には全力で伴走してくれる先輩たちがいます。 ただ「好き」なだけでなく、「自分の好きにプラスアルファして、こんな景色を世界に見せたい」という具体的な熱意を持っている人にとって、これほど恵まれた場所はありません。エンタメ企業だからこそ、自分の好きなことで世界を動かせる。誰にも負けない熱量を持った方に、ぜひ私たちの仲間になっていただきたいですね。
KADOMIXが仕掛ける次なる展開として見逃せないのが、第4弾となる『デート・ア・ライブ』のコラボレーショングッズです。2026年7月22日より受注開始となり、現在大反響を呼んでいる本作は、先行公開されたイラストがSNS等で過去最大の盛り上がりを見せるなど、ファンの熱い視線を集めています。胡桃さんをはじめとする若手社員の情熱と、KADOKAWAの挑戦文化が生み出した「夢のコラボレーション」のさらなる広がりに、ぜひご期待ください。
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https://group.kadokawa.co.jp/k-insight/ki58159.html
KADOMIX公式サイト
https://promo.kadokawa.co.jp/kadomix/
※本記事は、2026年8月時点の情報を基に作成しています