どこまでも自由に、想像力を解き放てるのがアニメ。
母国インドネシアでは建築を学んでいました。大学まで出たのですが、建造物をつくるということに対して、どうしても情熱が沸き立って来なかったのです。建築の分野はルールや制約も多い。自分の想像力を解放しきれないと考えたのかもしれません。そして自分の将来を考えたとき思い浮かんだのが、のびのびと自由に動き回るアニメのキャラクターでした。小さい頃から日本のアニメを観て育ってきた私。「自分が描きたいのは、表現の自由度がどこまでも高いキャラクターなんだ」と思ったのです。そして日本へ。専門学校を経て、念願のアニメーターになりました。
アニメーションの仕事は、緻密な計算と綿密な計画が求められるパズルのようなものだと感じています。歩く、走る、立つ、座る、泣く、笑う・・・。自分が日常生活でいつも行っていることなのに、それを紙に落とし、自然に見せるのって意外と難しいんですよね。とても難解なパズルですが、それを解いていく作業はとても面白い。また、諦めずに向き合えば、向き合っただけ応えてくれるのもアニメです。例えば、納期が迫るなかでも納得のいかなかった部分にどうにか踏ん張ってリテイクを加えることで、一気に仕上がりが良くなることも。「諦めず、頑張って良かった」と思える瞬間です。

世界に響く作品をもっと増やすため、業界の人材不足解消へ。
アニメーターとなって十数年。作画監督として数々の作品に携わらせてもらいましたし、後輩アニメーターを指導する立場にもなりました。私が教える側として大切にしているのは、相手への敬意です。アニメーターにとって絵は、まるで自分の子どものようなものだと思うのです。産みの苦しみを味わいながら、たっぷりの愛情を込めて描いた絵。それを頭ごなしに否定してしまってはやはり傷つくし、下手をすればこの仕事を嫌いになってしまうかもしれない。だから私は、その人がどうすればもっと上手くなれるのかを真剣に考えながら、できる限り丁寧にアドバイスするように心がけています。
ですがまだまだ。後輩アニメーターのために、もっと自分にできることがないかと模索中です。日本のアニメ業界は、人材が足りていません。アニメーター育成は、業界全体が抱える大きな問題。ベルノックフィルムズは、この大問題を解決するために生まれた会社でもあります。“スタッフの個性と成長の重視”を標榜し、アニメーターの育成にはしっかり投資と労力をかけていこうという風土がここにはあります。先輩アニメーター陣は若手を教えることに積極的ですし、「まだまだ後輩を育てていく時間を増やしていきたいね」という話もよくしています。今後、会社の仕組みを含めてアニメーターの育成環境がどんどん進化していくという予感もしています。
世界中の人たちが夢中になる作品を、自分の手で。

KADOKAWAグループであることのメリットは、いくつもありますね。強固なバックボーンがある安心感はもちろん、多種多様なIPを創出するグループですから幅広い作品に携わるチャンスも広がっています。また、情報収集や学習という観点でもメリットがあります。グループ従業員は、KADOKAWAが持つデータベースから自分の業務に関係する情報にアクセスすることができますし、業界の最新情報やグローバルでの動きなどのニュースもチャットなどを通じて日々配信されます。アニメーターとして役立つ知識を、労力をかけず吸収できる環境はとてもありがたいですね。
そうしたメリットも存分に活かしながら、私はアニメーターとしてもっと成長していきたい。まず目指すのは、総作監です。そのために知識も技術もますます吸収していかなくては。そしていつか、自分の作監した作品が世界中で放映され、母国インドネシアの子どもたちも夢中になって画面にかぶりついているなんてことが実現したら・・・。それほどうれしいことはありません。