山口さんは、入社前から谷口さんのことを知っていました?
もちろん! 『まどマギ』も観ていましたから。でもちゃんとお会いしたのは、入社2年目の原画試験(社内検定)のときが初めてでしたよね。
僕は、受託先で仕事をしていることも多くて、普段あまり会社にいないからね・・・(笑) でも、試験の絵を見て「しっかりとした実力のある人だな」と思ったのは覚えています。
お二人が最初にお仕事で関わったのはいつだったのですか?
『夜のクラゲは泳げない』で谷口さんが総作監とキャラクターデザインをされていたんですが、その最終話で私のカットを入れてくださったんですよね。
ミヤシタパークのシーンだ。
そうです。アレ、めちゃくちゃ難しかったんですよ! 谷口さんの引かれた線のニュアンスを拾うのが大変で。少しでもずれると、あのかわいさが出ないんです。そのとき原画チェックしてくれた先輩にも「頑張れ〜!」って鼓舞されながら、何度も書き直した記憶があります。あの仕事は、めちゃくちゃ鍛えられましたね。

師弟制度で、先輩からみっちり技術を吸収。
動画工房では、新人として入社するとどんな風に先輩から技術を教えてもらうのですか?
第二原画にあがるまでは、新人全員を共通で教えてくれる先生がつきます。その後、原画試験に受かってからは師弟制度みたいな形で、若手一人に対して先輩が一人ついてくれて教えてもらえるようになっています。私も今、師弟制度で教えてもらっていますね。自分の原画に赤ペンを入れてもらったり、先輩が実際に作画している様子を観察しながら、その都度、気になったことを質問したり、なかなか上手くいかない箇所を相談しにいったり。1日に何度もアドバイスをもらいに行っています。
それはありがたいですね。でもたまには谷口さんにも教えてもらいたいなって思うことはないですか?
それはうれしいけど、なんだか恐れ多い気が・・・。まだしっかりお話したことないのに、いきなり「添削、お願いします!」っていうのもなんだか気が引ける・・・。
いやいや、いやいや。全然構わないよ。同じ会社の先輩、後輩なんだから遠慮する必要はないでしょう。長い行列ができちゃうと少し困った顔をするかもしれないけど、そういうのは歓迎ですよ。ちなみに今は、教わるだけじゃなく教える時間もつくっている?
え? 私が?! まだペーペーだし、もっと絵の上手い人たくさんいるし・・・。
いや、やったほうがいいと思う。教えるってすごく勉強になるから。自分の足りないところも見つかるし、教えるために勉強しようとするし。“なんとなくの感覚”で描けてしまっていたものをどうやったら再現できるかなど、あらためて分析する機会にもなるから。教えるというのはすごくいい経験になる。
出身学校の違いなんかより、
その後の努力の量こそ大事。

この機会に、山口さんから谷口さんに相談してみたいことはありますか?
自分は美大出身なので、ちゃんとアニメ制作の勉強をしてきたわけではないんですね。でも同期には専門学校を出た子も多くて、アニメのセオリーや知識が豊富でうらやましいなって思っちゃうんです。絵も悔しいくらいに上手いし・・・。やっぱり美大出身って、この世界では不利になっちゃうんですかね?
いや、そんなことは絶対ない! 確かに専門には専門の良さがあるけど、美大には美大の強さがちゃんとあるから。何より、絵を描く基礎がしっかりしているのは本当に強い。デッサンをはじめとした基礎訓練をみっちりやってきた経験と実力は大きな武器だと思うよ。だから結局は、どの学校を出ようが、どの会社に入ろうが、やっぱり本人次第だよね。その後の頑張り次第で伸び率ってまったく変わるから。
負けるもんかー! って思いながらいつも練習しています(笑)
そういう気持ちがあれば、心配いらないよ。

一人ひとりの挑戦を支援してくれる会社。
だからこそ、幅広い経験を積んでいける。
山口さんをはじめとした若手アニメーターに、谷口さんからアドバイスするとしたらどんな話を?
技術的には、もう僕らの世代に勝っていると思うんです。それは観てきたものが違うから。アニメのクオリティって、時代とともにどんどんあがっていますからね。実際、若手の絵にヒントをもらったり、刺激を受けたりすることも多いです。また、勉強のしやすさも全く変わりましたよね。10年前、20年前は、資料1枚探すのも大変でしたが、今はいくらでも情報が手に入ります。実にうらやましい環境だと思う。
だからあと足りないのは、経験だけだと思います。原画だけでなく、作画監督という“直す”作業もそうだし、キャラクターデザインもそう。食わず嫌いをせずにいろいろなことを経験することで、自分の向き不向きがわかってくるだろうし、自分がどの方向に進みたいかも見えてくるはず。
確かに、幅広い経験は積んでいきたいですね。うちの会社は、「やってみたい!」って言ったらやらせてくれる風土があるから、何でもトライできそうな気もします。自分の興味があることを社内で発信すると、挑戦させてくれる土壌がすごくありますよね。例えば、「新しいソフトを試してみたい」って言ったらすぐに1台導入してくれたり、「演出やりたい!」と話す人がいたら実際に演出の先生がついてくれたり。「やってみたい!」と発信すると、その道筋がすーっと拓けていく感じ。
そうだね。そこは、動画工房ならではの魅力かもしれない。大企業などにはない自由度やスピード感があるよね。
日本のアニメ界を支えてきたアニメーター陣に囲まれながら、どこより大きな成長を。
では、これから就活をする学生さんに向けて、是非とも推したい動画工房のアピールポイントを教えてください。
私はやっぱり、先輩と後輩の距離が物理的にも心理的にも近いところですね。職場には、“忙しいから声をかけるなオーラ”を醸し出している人はいないですし(笑)、いつでもなんでも聞きやすい。むしろ教えたがっている先輩も実は多い気が・・・。以前、カメラワークについて分からないことがあって、とある先輩に質問しに行ったんですが、気がついたら私の周りを5人くらいの先輩が取り囲んでいたことがありました。「これはこうで」、「こっちはこうなって」って、生徒1人 対 先生5人のカメラワーク講座みたいな時間が始まって、みなさんからものすごく丁寧に教えてもらいました。本当にありがたい空間だなぁってしみじみ思いました。
いろんな人の意見やアイデアを聞くのはいいよね。人それぞれに得てきたものが違うし、経験も違うから、聞けば聞くほどいろんな引き出しを得られる。
谷口さんは、就活生に動画工房をPRするとしたどんな話を?
僕がこの会社に入ったのは、スタジオジブリ作品がきっかけでした。エンドロールで“動画工房”の名前が何度も出てくるんですよね。それで「アニメーターになるならここだ!」と思ったのが最初です。動画工房は創業して50年以上。老舗アニメ会社とも言われていますが、その歴史のなかで本当に数多くのクオリティ高い作品を手がけてきて、今も手がけている。やっぱりそうした良質な作品を生み出してきた人たちのすぐ隣で仕事ができるというのは、アニメーターとして何よりも成長の糧になると思います。ですので、在籍するアニメーターの質や技術の高さが一番のポイントじゃないかと思いますね。