定年まで、
仕事を楽しみ続けていける場所。
「自分は、研究職には向いていない・・・」。そう気づくのに、少し時間がかかりました(笑) 大学では流体工学を専攻し、固体面に衝突する液滴の挙動を再現する三次元シミュレータの開発に勤しみ、卒業後は鉄道会社に入社して、車両の保守、故障調査や研究などを経て、メンテナンス技法にまつわる企画推進などに従事。分からないことを解明したり、鉄道という巨大なもののものづくりに携われたのは、スケール感もあってとても面白かった。でも、何か一つのことだけに長年、集中し続けることが実は苦手だったと就職してから気づいてしまったのです。それで転職を考えました。いくつか選択肢はありましたが、KADOKAWAは小説、コミック、アニメ、映画、情報誌、音楽など様々なコンテンツを手がけており、さらにはライツ事業や海外事業、デジタルといった分野の仕事もある。ここなら、様々な仕事に携わりながら定年まで楽しめそうだと入社を決めました。
自分の興味関心と、
世の中のニーズが
重なる場所で。
今は、実用書編集の仕事に携わっています。“いろいろやりたい派”の私にとって、ここは最適な部署だったかもしれません。実用書の守備範囲は実に幅広く、暮らしに役立つ一冊があれば、ノンフィクション読み物もある。学習参考書があれば、ビジネス系書籍もある。人生の助けになるような書、エッセイや写真集、カレンダーだって。また、著者の先生も各界の専門家や研究者、ブロガー・YouTuber、イラストレーター、タレント、トップアスリート・・・と無限の選択肢が。本を書いたことのない方を見つけ出して依頼することも多く、まさに編集者の企画力や著者発掘力が物を言う世界だと感じています。そしてそれは、自分の興味関心をそのまま仕事にできることでもあると私は思っています。法律に関心があれば法律関連の本がつくれますし、英語の勉強がしたいと思えば英会話の本がつくれるのですから。“読者の役に立てるかどうか”、“多くの読者が求めていることかどうか”という基準をクリアすることは前提にありながらも、そのときどきで自分の関心ある分野の本を企画し、編集作業を通して、自分自身その分野の知見を深めていく。それができるのは、実用書編集者ならではの魅力だと考えています。
正しい情報を届けるからこそ、
誰かのためになれる。
私が編集者として一番大切にしているのは、情報の信頼性です。間違いのない情報を届けるために、ときに「そこまでやるか」という慎重さで事細かく事実確認をしていくのは編集者の大切な仕事だと考えています。例えば、ローカーボ(低糖質)料理研究家である藤本なおよさんと取り組んだ、『1週間2000円 欲望解放やせレシピ』。そこに書かれたレシピに万が一にも誤りがあれば、美味しさを保証できないばかりか、レシピ本の場合は事故にもつながりかねません。さらには著者さんの社会的信用まで毀損してしまいかねません。だからどこまでも念入りに。調理時間は正しいか? 調味料の分量は的確か? 材料費は2000円で確かに収まるか? などなど、自宅で実際に試作してみたり、複数のスーパーマーケットを訪ねて食材の価格帯をチェックしたりしながら、情報を精査しました。失敗も覚悟してチャレンジできるのはKADOKAWAらしさの一つですが、こうした場面では石橋を叩いて叩いて渡っていく。それが読者の方々に、安心安全かつ暮らしや人生の役に立つ一冊をつくりだすために不可欠なことだと思っています。
今後に向けては、世代を超えて読み継がれるような一冊、広く世の中から長年愛され続けるような一冊をつくれたらと思っています。映像化されるような本も手がけられたらうれしいですね。実用書が映画化されることがあるのも、KADOKAWAならではかもしれませんね。
※記事内容は、取材当時(2021年12月)のものです。
WORKS 担当制作物
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『1週間2000円 欲望解放やせレシピ』
ローカーボ(低糖質)料理研究家による世界一美味しいやせレシピ。2000円で収まる4週間分の晩ごはんのレシピと豪華糖質オフレシピ&スイーツ、時短レシピなど盛りだくさん!
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『だから僕は大人になれない』
1年のうち300日以上は引きこもり。スーパーに行くのも苦手なほど人見知りでありながら、チャンネル登録者数170万超えの人気ゲーム実況者ぺいんと氏。その日常を綴ったエッセイ集。著者初の短編ストーリーも必読。
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