本と妖怪が、いつも変わらず
私のそばにいてくれた。
5歳から10歳まで、親の仕事の関係でマレーシアに住んでいました。当時はまだ、動画配信サービスなどが普及していなかった頃。海外暮らしの私が楽しめる日本の娯楽といえば、本でした。学校帰りはいつも、「今日は何を読もうかな?」とワクワクしていました。しかも読み始めたら止められない性分で、小学校低学年で夜更かしまで覚えてしまいました。もう一つ大好きだったのが、妖怪。マレーシアでTV放送されていた日本のアニメがきっかけで、妖怪沼にもハマりました。帰国後も引越しの多かった子ども時代。友だちも環境も度々変わっていきましたが、ずっと私のそばにいてくれたのが本と妖怪でした。だから「編集者になりたい」と思ったのも、自然なことだったかもしれません。
なかでもKADOKAWAは、ホラーや怪異ものに強いというイメージがあり、私の志向にぴったりでした。ただ、編集者は狭き門というイメージを持っていたため、内定をもらってからも「配属はどこになるんだろう……」と内心ドキドキでした。でも社長の夏野さんが「好きなことじゃなければ情熱を注げない」と話している通り、私が入社した年度から新入社員は原則、第1希望/第2希望の通りに配属されることに。私は、念願の編集者になることができました。
本だからこそ、恐れず
思いきったチャレンジができる。
入社後の手厚さには驚きつつも感謝いっぱいです。右も左もわからない私の質問攻めに、先輩たちは一つひとつ丁寧に答えてくれましたし、ときに他編集部の先輩たちまでが仕事の相談に乗ってくれたのは本当にありがたかったですね。現在は、単行本の編集部に所属。ジャンルは文芸ですが、意外と“なんでもあり”な編集部です。純粋な小説に限らず、対談本あり、エッセイあり、小説のなかに絵や写真を挟み込むのもあり・・・etc. すべては編集者のアイデア次第。情熱と戦略さえあればどんな企画にもチャレンジできます。でも、入社当初の私はどこか遠慮してしまっていました。アイデアが浮かんでも、「実現は難しそう」「収支は合うだろうか……」などと勝手に決めつけて、自分でブレーキを踏んでいた時期があったんです。
そんなとき、先輩が言ってくれました。「映像などと比べると、書籍は小規模でビジネスを成立させることができる。だからこそニッチなものも含めて、多様な物語を生み出すことができる。何百万、何千万という人を楽しませるのももちろん凄いが、数千、数万の人たちに愛されるのだって素晴らしい価値があるのだから、もっと挑戦していいんじゃない?」と。そこからです。自分の“好き”を信じて、いろいろな企画提案ができるようになりました。
“創る力”も“売る力”も、
どちらも磨いていける。
KADOKAWAは、新人の“情熱”に思いきり賭けてくれる会社でもあります。例えば私が「こんな企画をやりたいんです!」と編集長に相談すると、「京谷さんが『面白いんだ』と言うならやってみなよ!」と背中を押してくれることもしばしば。“好き”を貫き通して、たくさんの新しい書き手の方々に依頼をして企画を立てたり、大好きな作家さんの担当になることもできました。なかには、もともとは先輩がご担当していた作家さんでも、「信じられないくらいに好きなんです!」としつこいほどに言い続けていた結果、「そこまで言うなら」と引き継がせていただいたこともあります。“好き”をまっすぐ受け止めてくれる環境があることは、本当にありがたいと感じています。
それから、“売る力・広める力”も持つ編集者になれるのも、KADOKAWAで働く魅力の一つだと感じています。メディアミックスが一般化している今、「書籍が赤字でも他で黒字になればいい」という発想を抱きがち。でもKADOKAWAでは、書籍単体でもしっかり黒字化・収益最大化を目指します。特に経験の浅い若手時代から“創る”だけでなく、“どう売るか”も鍛える時間を持てるのは、作家さんから信頼される編集者となるために大切なことだと私は思っています。
どんな“好き”を持っていてもいい。1年目だろうか何年目だろうが、自分の“好き”を信じ、それを起点に新しい楽しさを探究していけるKADOKAWA。この場所で、私はこれからも“好き”に熱中し続けていきます。
※記事内容は、取材当時(2025年11月)のものです。
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