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【受賞コメント】
「わたしの物語」を生きるにはどうすればよいか。日常茶飯史の中にその答えを探した本書が「学芸」として認められたことを嬉しく思います。歴史家として、過去から受け取ったメッセージを今を生きる人に手渡す役目が果たせたなら、これ以上の喜びはありません。――湯澤規子
本書は歴史地理学者が約5年に及ぶ調査・執筆によって、これまで「なかったこと」にされてきた産業革命期における日米の女性たちの日常茶飯の世界と、実は主体的だった女性労働者たちの実像を、間食(おやつ)を糸口に蘇らせた作品です。昨年の発売直後から話題を集め、高野秀行氏、津村記久子氏、ブレイディみかこ氏、梯久美子氏、柚木麻子氏をはじめ、多くの方々に書評・紹介をいただき、30紙誌以上で紹介されてきました。
高野秀行氏の推薦コメント
「読み始めたら止まらなくて一気読み。いやあ、むちゃくちゃ面白かった。意外な発見やつながりが連発して謎解きのようで本当に面白い」
★作品情報ページ
https://www.kadokawa.co.jp/product/322202001249/
【河合隼雄学芸賞とは】
優れた学術的成果と独創をもとに、様々な世界の深層を物語性豊かに明らかにした著作に与えられる。選考は1年ごとに行う。毎年3月からさかのぼって2年の期間内に発表・発行された作品を選考対象とする。選考結果の公式発表は『新潮』8月号(7月上旬発売)誌上およびwebマガジン「考える人」サイトにて行う。候補作品については公表しない。
※正式な受賞の言葉や選評は『新潮』8月号(7月5発売)誌上で発表されます。
<選考委員>(五十音順、敬称略)
内田由紀子
中沢新一
山極壽一
若松英輔
※上記情報は一般財団法人 河合隼雄財団のWEBサイトより引用
https://www.kawaihayao.jp/ja/prize/3550.html
【受賞作『焼き芋とドーナツ』について】
その甘みは、女性労働者のソウルフードだった。おやつから紐解く人間交流史。
歴史の狭間に沈んできた壮大な連鎖が浮かびあがる――。
津田梅子が二度目の留学で学んだウッズホール海洋生物学研究所。その前身施設を設立したエレン・リチャーズは女性で初めてマサチューセッツ工科大学に入り、家政学を確立した人物で、彼女が大学を志すきっかけとなった雑誌の寄稿者の一人が『小公女』らで知られるバーネット。
その雑誌や『若草物語』のオールコットらによる労働文学の読者に、マサチューセッツ州のローウェルの女工たちもいた。彼女たちは女性だけの共同組織を作り、雑誌の発行も行っており、それらを含めたアメリカの女性教育を見聞して日本での教育拡充も訴えたのが森有礼だった。
■集会と焼き芋は喜びとささやかな抵抗
■日本でもアメリカの女性運動を同時代的に参照し、実践していた
■ローウェルの工場の窓には新聞の切り抜きが貼られ、それは窓の宝石と呼ばれていた
■ドーナツは主食のように見なされていた
女性労働者は一方的な弱者でなく、実は「わたし」の人生を強かに拡張していた。
ではなぜ、「わたし」という主語で語る術を私たちは失ってきたのだろうか?
【著者プロフィール】
湯澤規子(ゆざわ・のりこ)
1974年大阪府生まれ。法政大学人間環境学部教授。筑波大学大学院歴史・人類学研究科単位取得満期退学。博士(文学)。明治大学経営学部専任講師、筑波大学生命環境系准教授を経て、現職。「生きる」をテーマに地理学、歴史学、経済学の視点から、当たり前の日常を問い直すフィールドワークを重ねている。『在来産業と家族の地域史 ライフヒストリーからみた小規模家族経営と結城紬生産』(古今書院)で経済地理学会著作賞、地理空間学会学会賞学術賞、日本農業史学会学会賞を受賞。『胃袋の近代 食と人びとの日常史』(名古屋大学出版会)で生協総研賞研究賞、人文地理学会学会賞(学術図書部門)を受賞。他の著書に『7袋のポテトチップス 食べるを語る、胃袋の戦後史』(晶文社)、『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか 人糞地理学ことはじめ』(ちくま新書)、『「おふくろの味」幻想 誰が郷愁の味をつくったのか』(光文社新書)等。
【書誌情報】
書名:焼き芋とドーナツ 日米シスターフッド交流秘史
著者名:湯澤規子
発売:2023年9月28日(木) 電子書籍も配信中
定価:本体2,200円+税
体裁:四六判/上製
頁数:368頁
発行:株式会社KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/322202001249/