読売巨人軍、侍ジャパンでスコアラーを務め、2009年のWBC第2回大会では日本代表チームの世界一に貢献した三井康浩氏。
「勝敗の6割は事前準備で決まる」と語る、その三井康浩氏のスコアラーの技術を本書ですべて明かします。
試合会場の光(太陽光、照明)、風、フェンスとの距離、ファウルゾーン、マウンド、バッターボックスなどの試合前の準備に始まり、試合中における配球チャートのつけ方、投手分析(バッテリー分析含む)、打者分析から相手チーム攻略のための視点と実行方法まで、プロスコアラーの技術すべてを明かしています。
分析班や担当者がいない高校野球部のようなアマチュアチームであっても、本書で説明する技術は十分に活用できるものであるとし、三井氏は「『次のプレー』が予想できれば一歩踏み込んだ野球を体現できる」、「アマチュアの野球人たちに、よりよい成果を挙げてほしいという願いを込めた」と本書の執筆理由を語ります。
本書制作にあたっては実際に三井氏が神宮球場で大学野球の試合を観戦し、「自分がこのチームのスコアラーだったら、この部分を確認して作戦に活かす」といった具体的な事例をベースにしながら構成。初級・中級・上級レベル、すべての野球チーム必読の1冊になっています。
書名:
『もし、プロのスコアラーがあなたの野球チームにいたら何をやるか?』
著者名:三井康浩
定価:1,760円(本体1,600円+税)
版型:四六判並製
頁数:304ページ
ISBN:9784041112847
発売日:2022年3月9日(水) ※電子書籍同日配信
https://www.kadokawa.co.jp/product/322012000794/https://www.amazon.co.jp/dp/4041112842<アマチュア野球にはデータ分析への「誤解」がある>
プロ野球ならいざしらず、アマチュア野球に関していえばデータ分析を取り入れるのが難しいというのも理解できます。まず、そもそも人手が足りません。もちろん、時間もお金もないでしょう。状況的に、データ分析すること自体が難しいのです。「データがあれば有利になるけれど、とてもじゃないが手がつけられない」というのが実情だと推測します。
確かにそのとおりです。後述しますが、わたしはこのなかでも、特にデータ分析を担う人手を確保することについては、もっともハードルが高いと考えています。
その一方、「最初からあきらめるのは、もったいないことではないか?」とも思っています。なかなか一歩目を踏み出すことができない背景には、「そこまでする重要性や必然性はないのでは?」と思ってしまう「誤解」があるからだと見ています。これまでに、わたしがよく耳にしてきたものをいくつか挙げてみましょう。
1、アマチュア野球の多くはリーグ戦ではなくトーナメント方式による一発勝負なので、データを取る意味がそこまでない。
2、データ分析をするには、ひとつの相手に対して複数の試合データを取らなくてはならないので、とてもやりきれない。
3、映像がないとデータは取れない。映像を撮るための道具や設備がない。あるいは、ルール上、映像を撮ることが禁止されている。
4、そもそも、正確なデータを取れない。そういった能力を持った人材がチームにいない。
5、データ分析をして攻略のプランを立てたとしても、そのとおりに選手が動けない。
これらの誤解に対して、本書で一つひとつクリアにしていきます――(第1章より)
Chapter0 なぜデータ分析が重要なのか?
野球は準備のスポーツ。「事前の準備が勝敗の6割を握る」
アマチュア野球にはデータ分析への「誤解」がある
たとえ1試合でもデータがあれば有利になる
映像がなくてもデータ分析は可能
選手兼任でもいい。「できないからやらない」ではダメ
漠然と野球をやっていると力関係であきらめてしまう 他
Chapter1 「地の利」を得る試合前の準備
《光(太陽光・照明)》
《風》
《グラウンド》
《フェンスとの距離》
《ファウルゾーン》
《マウンド》
《バッターボックス》
Chapter2[攻撃編] 1点でも多く得点を奪うためにできること
《配球チャート》
《投手分析》
《投手攻略》
《盗塁》
《守備力分析》
Chapter3[守備編] 失点を未然に防ぐためにできること
《打者分析》
《打者攻略(配球)》
《守備》
《走塁》
Chapter4 チームを勝利に導くデータの伝え方
プロよりもアマのほうがデータでアドバンテージを得られる
ミーティングでは10ある情報の1か2程度を伝える
個別で選手に伝えたいことはあとから補足する
「~するな」という伝え方は選手のプレーを窮屈にする
テクニカルなアドバイスは、伝え方の工夫が必要
代打への指示はピンポイントにとどめる
リリーフ投手の役割は、プロとアマで大きな違いがある 他
三井康浩(みつい・やすひろ)
1961年島根県生まれ。出雲西高等学校時代に強打で鳴らし、78年ドラフト外で読売巨人軍に入団。84年に現役を引退。引退後は、二軍マネージャーを経て、スコアラー、査定室長、統括ディレクター、編成本部参与等を歴任。2018年末の退団まで40年間にわたり巨人軍を支え続けた。09年のWBC第2回大会では日本代表チームのチーフスコアラーを務め、世界一に貢献。現在は各メディアで野球解説をする傍ら、セミナーや野球教室なども行う。合同会社スリップストリーム所属。著作に『ザ・スコアラー』(角川新書)がある。
『ザ・スコアラー』(著:三井康浩)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321906000883/https://www.amazon.co.jp/dp/4040823362