戦時下に空前の隆盛を見せた、日本の大衆文化。当時、日本が進出していた「外地」への国民の関心は高く、小説・歌謡などの題材にも多く「外地」の素材が採られました。一方で日本の大衆文化を移植しようとする、文化の領域拡大の活動も見られます。大衆文化は、なぜ盛り上がりを見せ、人びとは駆り立てられていったのでしょうか。戦争・植民地支配の視点からも、あらためて「大衆文化とは何か」を捉え直します。巻末には、500作品を超える、戦時期の大陸関連書籍・レコードのリストも収録しました。
■収録内容(カッコ内は執筆者)
序 統制と拡張──戦時下日本文化の力学(劉建輝)
第一章 新たなる「大衆文学」の誕生―――戦争が打破した文学の秩序(石川肇)
第二章 兵隊歌謡――軍服を着た良民を歌う(細川周平)
第三章 日本映画界・永田雅一の十五年戦争(山口記弘)
第四章 上海における東宝の映画工作――「茶花女」をめぐる映画史の内幕(秦剛)
第五章 満蒙開拓青少年義勇軍とまんが表現の国策動員――田河水泡と阪本牙城の事例から(大塚英志)
第六章 「外地」における日本製洋菓子の広告戦略――子ども像を手がかりに(前川志織)
第七章 いわゆる「帝冠様式」と中国現代建築史――旧満洲、新京の官衙を手がかりに(井上章一)
第八章 戦時下の国民生活と体育・スポーツ(鈴木楓太)
第九章 戦争とツーリズム――戦前における日本旅行会の満洲旅行(高媛)
第十章 「外地」の大衆文化――雑誌『女性満洲』に見られるファッション(王志松)
終 章 植民地大衆文化研究とは何か――映画「上海の月」とメディアミックス(大塚英志)
■大衆文化研究プロジェクトとは
国際日本文化研究センター(日文研)が2016年度から2021年度にかけて人間文化研究機構・機関拠点型基幹研究プロジェクトとして取り組んでいるプロジェクト(正式名称「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」)です。日本文化全体を構造的・総合的に捉え直すため、大衆文化の通時的・国際的考察に取り組み、新しい日本像と文化観の創出に貢献することを目的としています。
(公式サイト:
https://taishu-bunka2.rspace.nichibun.ac.jp/)」
■書誌情報
『戦時下の大衆文化 統制・拡張・東アジア』
編者:劉建輝、石川肇
四六判 384ページ
定価:2,750円(本体2500円+税)
発売日:2022年2月18日(電子書籍も同日発売)
ISBN:978-4-04-400565-8
発行:株式会社KADOKAWA
KADOKAWAオフィシャルサイト 書誌詳細ページ https://www.kadokawa.co.jp/product/321910000166/■シリーズ一覧
第1巻『日本大衆文化史』(2020年9月刊) 編著:日文研大衆文化研究プロジェクト
第2巻『禍いの大衆文化 天災・疫病・怪異』(2021年7月刊) 編者:小松和彦
第3巻『身体の大衆文化 描く・着る・歌う』(2021年11月刊) 編者:安井眞奈美、エルナンデス・アルバロ
第4巻『〈キャラクター〉の大衆文化 伝承・芸能・世界』(2021年11月刊) 編者:荒木浩、前川志織、木場貴俊
第5巻『戦時下の大衆文化 統制・拡張・東アジア』(2022年2月刊) 編者:劉建輝、石川肇