商品・サービストピックス
植物の起源。それは今から20億年以上前に、海の中で光合成をはじめたシアノバクテリアに由来します。それから長い時を経て、植物は陸上へ進出し、花や種子を創造したりと進化を遂げました。こうした植物の驚くべき神秘と生命力に感化されて制作された植物アートを本展示では取り上げます。アーティストの視点や作為が加わったマンメイドな植物はどれも何かが極端で、誇張された、いわば不自然な植物。しかし、そこには科学と芸術が融合した時にだけ生じるワンダーな魅力が満ち溢れています。7人のアーティストが植物とコラボレーションして作り出した不自然な植物。光合成と想像力がむすんだ植物造形の美の世界をお楽しみいただきます。
いつかは朽ちる押し花で作った
1.儚すぎる植物
花はただ咲いているだけだというのに、なぜか人々はその咲き姿や、無感情になされる生命の一連に、心の移ろいを重ねずにはいられない。とりわけ女たちは、かつてより花にたとえられることもしばしばで、それゆえ、女たちは色美しく、鮮やかな咲き姿に憧れ、羨み、短命さにいつかは色褪せるだろう自らを重ねてしまうのかもしれない。 女とは一体なんであろうという思考の中で、さまざまな個性を持った女たちの洋服を、化粧を、終いには皮膚や肉までもはぎ取ってしまった時、そこに残るのは女の本質の意を持った「骨」だった。その骨を、女の形容として用いられ、描かれてきた花というモチーフで再構成し、生まれたのが彼女floraである。
一番美しい姿を図面化した
デジタルツール( 主に3Dモデリングソフトウェア)を駆使し、植物のやわらかく有機的な形態とつめたい印象のあるテクニカルなスケッチを融合させ、複合的なイメージの作品を生み出している。芸術と科学の境界への眼差しや、コンピュータと植物に関する知識などを踏まえて活動する中で、現代に植物図譜の新たな可能性を開くとともに、工学における図面の美的な可能性に対して注意を向けている。 刻々と変化する姿を金属で切り取った
私は、植物そのものの姿よりも、自然の中で日々変化し生きている植物の様子に興味があります。花が咲き、満開からあっという間にしぼみ、葉が付き色付き、枯れていく。風が吹けば茎は揺れ踊り、花びらや枯れ葉はサーカスのように宙を舞っていく。自然の中刻々と変化する姿は一瞬として同じ姿ではなく、とても美しく生命の神秘に感動します。私の作品を見てもらうことで、路傍にある植物や、自然の様子の美しさを多くの人に再認識し意識してもらい、人々の今まで見えていた日常の景色を変えていきたいと思っています。 ガラスの中で灰となって刻まれた
ガラスは透明で美しい存在ではありますが、それよりも私は「記録」や「保存」に適した素材であると捉えています。私にとって植物採集は、私と今私のいる場所との繋がりである懐かしさの感覚を見つけるための大切な行為です。その採集した植物をガラスの中に私と場所の記憶として留めたいと思ったことが制作の動機です。ガラスに挟んだ植物を窯の中で焼成すると、その姿は真っ白な灰となり、まるでタイムカプセルのように永遠に時間を留めておくことができます。また植物は水、空気、土などの周辺の環境をも含み、それらの土地の記憶はガラスの中に泡などとして視覚化されています。
夢で見た一輪の花を実体化した
5.幻想すぎる植物
夢のように綺麗なもの、美しい光景を見たくて作っています。思い出の中に咲く花は、現実よりも透明感があって光を帯びていると思うんです。夢の花の実体化、透明で光をたく花を見る幸福感、これを共有したくて作っている気がします。“奇跡を目にした時のような感動が込み上げてくる” “夢で見たものと同じ” そう言っていただけた時、とても嬉しかったです。 光合成をやめてみた
植物が持つ機能美に魅了され、色や形を形成するプロセスや擬態などに着目した作品を制作し発表しています。ここで展示する作品は「光合成」に注目し、さまざまな生物と植物の関係性をめぐる2 つの環世界を5つの球体作品で表現しています。
1 光合成をやめた植物 「菌従属栄養植物の世界」
生命誕生から38億年。植物はその命を未来へつなぐため、花を、果実を、そして種子をつくりあげてきました。ただ純粋に生きぬき、子孫を繁栄させるためだけに、削ぎ落されたその規則的でストイックなフォルムは、自然が生み出した究極の機能美と言えるでしょう。さらに基本的な特性として植物は地面に根を張るため、自ら積極的に動くことができません。だからこそ、火、風、水など、周囲の自然環境を巧みに利用し、広範囲に自らの子孫(種子)を運ぶ戦略を取った植物を本展時ではお見せします。
本田 亮
樹名:不思木(ふしぎ)