本書は書名の通り、株式会社ワークマンが全国880店を超える加盟店に対して「負担をかけない程度の成長」を望み、同社と加盟店とで「ホワイト」な関係性を築こうとし続けている在り方について明かした、
同社専務取締役の土屋哲雄氏本人による1冊です。
土屋氏は本書にて「フランチャイズ加盟店に厳しいノルマを課して、できるだけ多くの収入をあげさせて、搾取するようなチェーン店も世の中にはあるようだ。『収奪型フランチャイズ』などと呼ばれるが、そういうあり方は私たちの考え方とは対極にある」(本書「まえがき」より引用)と語り、「業界で第一位になりたい、利益を2倍にしたい、などといったことは経営目標にはしていない。
目指しているのは『100年の競争優位』を築いていくことだ。我々のような会社でこれをかなえるためには加盟店との関係がホワイトであることが大前提になる。収奪型と呼ばれるようなブラックな運営になっていたなら、加盟店の継承者が現れるはずはないからだ」(同)と、その考え方を明かします。
過去20年間で最大の落ち込みを記録したアパレル市場の中、「WORKMAN Plus」や「#ワークマン女子」など次から次へと新しい手を打って好調な業績を続ける株式会社ワークマンにおいて、その継続的な成長を可能にしているのは「加盟店とのホワイトな関係性」にありました。本書
『ホワイトフランチャイズ――ワークマンのノルマ・残業なしでも年収1000万円以上稼がせる仕組み』では、実際の加盟店オーナーの方へのインタビューも盛り込んで、その内実を明らかにします。
WORKMAN Plus外観
WORKMAN Plus内観
【本書のポイント】①ワークマン業績好調の理由は? ⇒「鉄人であるより凡人であり、家庭人であってほしい」という思い
2020年の日本の衣料消費市場規模(金額)は13.7%減少し、過去20年間で最大の落ち込みでした(繊研新聞)。コロナ禍でアパレル業界が苦境に立たされるなか、ワークマンはひとり勝ちとも言える状況です。一過性のブームで終わらず継続的な成長を可能にしているのは、「フランチャイズ加盟店に無理をさせないためにはどうすればいいか」ということを常に考える同社の姿勢にあります。
②ワークマンにとって「ホワイト」とは? ⇒子どもやスタッフが「あとを継ぎたい」と思える働き方
一部業界では「収奪型フランチャイズ」がニュースになり、ブラックな労働環境に陥りやすいというイメージが拡がりました。しかし、ワークマンがフランチャイズで目指すのは、子どもやスタッフがあとを継ぎたいと思える働き方。保育園のお迎えは一番乗り、閉店5分後には帰る、平均年収1600万円……残業・ノルマなしで本当に可能なのか? 実際の店長や社員たちの働き方を専務・土屋哲雄氏が本書で解説、紹介します。
③ワークマンのやり方は加盟店に「やさしすぎる」? ⇒オーナーの自由度こそワークマンの特色
2012年にワークマンに入社した土屋氏も当初は「加盟店にやさしすぎる」姿勢に違和感を持ったと言います。しかし、がっつり働きたい人もいればマイペースでやっている人もいるという、その自由度の高さこそがワークマンの特色だと考え、オーナーそれぞれが自分らしい価値を求めながら、長く続けていけるような仕組みづくりを目指したのです。
ワークマンでは売上げを伸ばすことを優先せず、フランチャイズ加盟店に無理をさせないためにはどうすればいいかということを常に考えている。がんばりたい! という人がいても、あまりがんばらないでほしいので、そのためのシステムづくりを進めている。
努力をしないでほしいと願っているわけではもちろんない。利益至上主義に陥らず、自分らしい価値を求めながら、長く続けていける働き方を探してほしいということだ。売上げを優先しないというのは決して建前ではない。
短期的な経営状況が良ければいいと考えるのではなく、いい状態を継続していくことを目指しているのである。そのためには、どこかで息切れしてしまうような働き方に依存しているわけにはいかないし、突出した人材に頼っていても先は保証されない。凡人による、がんばりすぎない経営であってこそ、継続が可能になる。
私たちはそのために「ホワイトフランチャイズ」というべきビジネスのあり方をつくりあげようとしている。(本書「まえがき」より引用) |
【フランチャイズ再契約率99% ひとが辞めない仕組み(本書第1章より)】
・自動発注システムの開発で発注業務の負担軽減
・商品は夜間に配送、営業時間中の受け渡しがない
・レジ清算はお昼までに済ませておくルール
・フランチャイズ加盟に必要な要件 など
#ワークマン女子森岡南店外観
#ワークマン女子盛岡南店内観
【著者略歴】
株式会社ワークマン専務取締役 土屋哲雄氏(著者近影)
土屋哲雄(つちや・てつお)
東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て三井物産デジタル社長に就任。本社経営企画室次長、三井情報取締役。2012年ワークマンに入社。19年より現任。ワークマン店は作業服市場を取り尽くす勢いのため、18年に新業態店「WORKMAN Plus」を仕掛けて大ヒット。20年に女性目線の「#ワークマン女子」店を立ち上げ、10年で400店舗の出店をめざし快進撃中。著書に『ワークマン式「しない経営」』(ダイヤモンド社)がある。
【書誌情報】
『ホワイトフランチャイズ――ワークマンのノルマ・残業なしでも年収1000万円以上稼がせる仕組み』
著者:土屋哲雄(株式会社ワークマン専務取締役)
発売:2021年12月1日(水) 電子書籍同日発売
定価:1650円(10%税込み)
内容紹介:「がんばれ」で解決するのをやめた。ノルマなし、閉店5分後に退勤、家族と過ごしながら年収1000万円――みんなで幸せに働けることが、お客さんにとっても幸せなはず。それはフランチャイズでも変わらない。ワークマンが挑戦するこれからの働き方!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322105000631/https://www.amazon.co.jp/dp/4041118476<目次>
まえがき
第1章 継がせたい働き方
4人の子どもたちみんながワークマンを〝継いだ〟理由
チェーン店だけど「家業」を継ぐのに近い感覚
他の仕事もしたけれど――三姉妹が最終的に選んだ道
フランチャイズ再契約率は99% ひとが辞めない仕組み
第2章 ホワイトへの道
「ワークマンの歴史」を知る店長たちの本音
無名、不景気の時代でも続けてこられた理由
店番しながら文庫本1冊読めるくらい「ゆるい商売」だった
ブームを巻き起こしたワークマンプラス成功の秘密
第3章 時間とお金の実際
初期費用に200万円、年収は1600万円
店長たちの就労時間と収入の現実
全国屈指の繁盛店でも、週に一度ゴルフができる生活
結婚、妻の妊娠、住宅ローン……会社より独立を選んだ結果
初年度収入2000万円も夢じゃない!? ワークマンドリーム
第4章 災害の復興者たち
被災者でありながら熊本のために奮闘した店長たち
繰り返された震度7 それでも救援物資は届いた
熊本地震で店長が見つけた「なんのために働くか」
災害や非常時、コロナにも強い体制はこうして築いた
第5章 次世代が育つ働き方
明るい未来が予見される新時代の店長が生まれてきている!
これから30年、40年とやっていけるパワーと可能性
普通は口にできないことでも言ってしまえる会社になってきた
〝熱心なファン〟が新しい可能性を広げてくれる
採用時点のスキルよりも「親切心」が長い目で見て重要
あとがき