- 第12回 小説 野性時代 新人賞 選評より抜粋
「
読み終わった瞬間、今回はこの作品を受賞作として推すために選考会に臨もう、と強く心に決めました。(中略)リアリティのある「他者との入れ替わり」の物語でありながら、細部に宿る描写のひとつひとつの奥に、たとえ体が入れ替わらなくても、私たちが普段少しずつ感じている「自分という存在」への違和感や生きにくさに通じる感覚があり、「入れ替わり」はそれを可視化する装置に過ぎないのだと感じました。その点がとても現代的かつ普遍的。作品全体に通底しているのは、たとえ、元は自分の人生であったとしても、それさえ、「他者の人生を尊重する」という主人公たちの、ひいては著者の誠実な願いではないかと思います。作中のような運命でなくとも、選べない運命や人生と格闘する、そんな私たち読者に対するエールのようにも読め、この作品を世に送り出せることが心から嬉しいです」
──辻村 深月 氏
「現代のジェンダー議論を余すところなく受け取り、あるいは抵触するところを上手に切り分け、かつ全てを登場人物の個性や、個人的な人生の選択としてとらえなおしたところに、高い筆力だけでなく書き手の精神的成熟、また現代に適した眼差しを感じさせられる」
──冲方 丁 氏
「自分の身体を受け容れていくむずかしさや、家族同士のコミュニケーションのむずかしさ、実存的な不安など、我々が生きていくにあたってぶつかるさまざまな問題を、新鮮なかたちで浮き彫りにしている」
──森見 登美彦 氏
「男女の入れ替わりもので、元に戻らない!その発想だけでもう100点。そしてそれを違和感なく書き上げた才能が1億点!これがデビュー作とはすごい!絶対に気持ちがわからないのに共感してしまう不思議。(中略)入れ替わりのトリックや奇抜さよりも、人生の話がメインなのに、入れ替わりじゃないと描けない必然性がある。1つのジャンルとして確立している“入れ替わりもの”に新たな楔を打った作品」
ー 岡本書店 恵庭店 山口 榛菜 様
「こんなにも感情移入してしまったのは、互いの人生を尊重しながら懸命に生きる2人の過ごしてきた15年が、とてもリアルに、そして丁寧に描かれていたからだと思います。恋とも愛とも違う、共に生きる2人から紡ぎ出される言葉のひとつひとつがなんだかとても綺麗で真っ直ぐで心に刺さるんです。2人の間に吹く風がとても澄んでいて泣けてくる。」
ー 未来屋書店 宇品店 山道 ゆう子 様
「まさか、こんなに何度も涙が溢れるとは!!(中略)“入れ替わり”という非現実的な世界の、痛ましくも愛おしい日常を丁寧に描いたこれまでになかった作品」
ー 六本松 蔦屋書店 峯 多美子 様
「これがデビュー作だなんて信じられない…」
ー 文真堂書店 ビバモール本庄店 山本 智子 様
「一文目からドキドキさせられ、魅きつけられました。秘密を分かち合う2人の青春と成長の物語」
ー 文真堂書店 長岡店 實山 美穂 様
「読後、心の中にたくさんの感情があふれてタイトルを抱きしめたくなりました!!」
ー 紀伊國屋書店 福岡本店 宗岡 敦子 様
「入れ替わり、という設定の作品は、これまでいくつも目にしてきましたが、こんなにドキドキして、共感してトリハダが立ったのは初めてです」
ー SerenDip明石書店 アエル店 武方 美佐紀 様
「生きる上で感じる小さな戸惑いをていねいに描き、すべての人生はそれぞれかけがえのないものだと語りかけてくるような作品だ。私やあなたの人生のように、普通に優しくて、普通に深い。次の作品が待ち遠しい作家さんだ」
ー HMV&BOOKS OKINAWA 中目 太郎 様
「もう“君嶋彼方”の次回作が楽しみで仕方ない」
ー うさぎや宇都宮駅東口店 齋藤 理人 様
「今まで読んだことがない入れ替わり物です。読んでいて面白くて、そしてせつない」
ー 宮脇書店 ゆめモール下関店 吉井 めぐみ 様
「この不思議な読後感にしばらく漂っていたい気分です」
ー 啓林堂書店 奈良店 松田 弘美 様
「いやはや、とんでも無い新人作家さん登場。野性時代すごいぜ!感動てんこ盛り、超一級のエンターテインメント作品」
ー 大垣書店 井上 哲也 様
「出合ったことのない感動を約束する唯一無二の一冊だ!これはきっと忘れられない物語となるだろう」
ー 内田 剛 様
「もう、本当に良かったです。今までに感じたことのない切なさ」
ー 未来屋書店 碑文谷店 福原 夏菜美様
同級生と身体が入れ替わって、元に戻れないまま15年が過ぎた。
家族も友達もだまし続けて、たったふたり、支え合って生きてきた。
【あらすじ】
高校1年の坂平陸は、プールに一緒に落ちたことがきっかけで同級生の水村まなみと体が入れ替わってしまう。いつか元に戻ると信じ、入れ替わったことは二人だけの秘密にすると決めた陸だったが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、うまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。もう元には戻れないのだろうか。男として生きることを諦め、新たな“水村まなみ”としての人生を歩み出すべきか――。迷いを抱えながら、陸は高校卒業と上京、結婚、出産と、水村まなみとして人生の転機を経験していくことになる。
君嶋 彼方(きみじま・かなた)
1989年生まれ。東京都出身。「水平線は回転する」で、2021年、第12回小説 野性時代新人賞を受賞。同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。
2009年創設の⽂学新⼈賞。
将来性豊かな稀代のストーリーテラーを選出します。
・公式サイト:
https://awards.kadobun.jp/yaseijidai/
・選考委員:冲方丁、辻村深月、森見登美彦(敬称略、五十音順)
書 名:君の顔では泣けない
発 売:2021年9月24日(金) 電子書籍同日配信
定 価: 1,760円(本体1,600円+税)
頁 数:256頁
体 裁:四六変形判
装 丁:坂詰佳苗
装 画:古塔つみ
特設サイト:
https://kadobun.jp/special/nakizakana/
作品詳細:
https://www.kadokawa.co.jp/product/322105000257/