<イベントレポート>
昭和の終わりから平成を駆け抜け、なお現役で最前線で戦い続けている二人の天才、武豊と羽生善治が、32年ぶりに対談するという超企画。たった60分という短い時間ながら、これまでなかなか語られることのなかった天才二人の考え方やエピソードが聞け、濃厚で非常に貴重な機会となった。
二人が最初に出会ったのは1989年4月4日、東京スポーツの紙面に掲載された対談だった。1987年17歳でデビューした武豊は、翌年スーパークリークに騎乗し史上最年少で菊花賞(GI)制覇。競馬界の若きホープとして突き進んでいたころだ。
一方、羽生善治は1985年に中学生で棋士デビューし、1989年に19歳で第2期竜王戦のタイトルを獲得することになるが、インタビュー当時はまだ獲得する前だったものの、すでにその天才ぶりを発揮。騎手と棋士というこれから未来を背負って立つであろう若き二人の対談企画が組まれたわけだ。
1989年はちょうど平成元年。その後の二人の活躍は、ここで語るまでもないが、平成から令和へと元号が変わっても、競馬界・将棋界のトップに君臨するレジェンドである。そんな二人が今宵再び対談する機会を得た。
対談ということで、二人がステージに登壇して……という流れになるのかと思いきや、なんと二人ともリモート出演による対談だった。ステージ上に黒い物体が2つ並んでおり「ゼーレ?」「モノリス?」などのコメントが流れていたが、そこに二人が映し出されたのである。テレビのワイドショー番組でよくあるリモート出演と同様だ。
MCは、将棋好きでもある吉本新喜劇の座長・小籔千豊。小籔はステージに登壇し、「えげつないお二人」との褒め言葉で二人を紹介。映像を見ながらの進行となった。二人とも直接会えなかったことは残念としたものの、お互いの活躍について質問されると、武は「歳も近くてプロデビューもほぼ同じで、ホントに天才だなぁという思いで拝見していました。羽生さんの活躍の報道を見ると、励みにもなり勇気をもらっていました」と語った。羽生は「最初にお会いしたときから、大きな実績を残していて、それから30年間ずっと活躍しつづけており、武さんだけ時間が止まっているのではないかと。どうしたらずっと一線にいられるのか不思議だと思っています」と返したところ「そのまま羽生さんにお返しします」と武。コメントは「おまゆう」「ブーメラン」といったツッコミの嵐となり笑いに包まれた。
続いて「天才なりの困難や壁があったのでは?」という質問に、武は「小さな困難は毎週のようにありますが、今思えば、2010年から12年にかけてがしんどかったですね」とのこと。ちょうど2010年3月に落馬し頚椎と鎖骨を骨折。肩の関節がなかなかもとに戻らず、騎手として復帰できるか不安だった時期だ。当時は騎手一人だけでは状況を一変させることも難しく、辛抱強く毎日頑張っていたそうだ。
一方羽生は19歳で初タイトルをとった翌年の初防衛戦だと語る。「それまでは若さに任せて戦っていたが、初めて守る立場になったときに、負けたら何かを失うというプレッシャーが印象に残っています」。前に進むときと、守るときの感覚はまったく違い、経験して初めてわかったという。と、ここまでなら誰もが感じることかもしれないが、このあとが天才である所以かもしれない。「人間って慣れがあるので、カド番が1年に何度もあると、だんだん慣れてしまいました」(羽生)。さすが約30年間でタイトル獲得期99期を数えるだけのことはある。ただ、将棋は同じ時期にタイトル戦が重なることもあり、一方では勝てばタイトル獲得、他方は負けたら奪取されるというときは、心境がわけわからなくなることもあるようだ。
ここから羽生のエンジンがかかり、トークを回し始める。今年の3月に馬とゲートに挟まれて足の甲を骨折した武は、5月の天皇賞(春)のタイミングで復帰。これに対して羽生は、10代のときに骨折したときのエピソードを語った。「右手を骨折して1ヶ月程度、左手で指していました。相手からすると初心者のような指し方なのでやりにくかったと思います」(羽生)。骨折しても将棋を続けられるという点で、棋士でよかったと感じたようだ。
競馬も将棋も勝負の世界。お互い負けたときどう気持ちの整理をするのかという話に。羽生は「突き詰めていくと、全部自己否定になってしまうため、突き詰めすぎず適当に切り替えるようにしています」とのこと。一方、武は1日に何度も騎乗することが多いが「まったく違う勝負なので、ゴールしてしまえばあまり引きづらない」という。これに対して羽生は「持って生まれたメンタルの強さがある」と指摘。武は勝ってもそのレースのことに浸ることもなく、あとから映像を確認して検討もほとんどしないという。
また、武は「鼻差で勝ったか負けたかは大体わかります。100m手前で届くか否かもわかるときがあります」と勝負感について語れば、羽生の場合は「将棋の世界は“指運(ゆびうん)”という言葉があり、最後にいいところへ指が行くかどうかということもある。僅差の勝負のときはそういうこともあります」とのこと。ただ、体感的には届くか届かないかは、それが結果間違っていてもあるそうだ。お互い微細な感覚が研ぎ澄まされているということが伺えるエピソードだ。
今後の夢、目標に対して羽生は「藤井聡太さんが大活躍されているので、タイトル戦で顔合わせできれば」とのこと。これは実現したら日本中が大注目になるだろう。タイトル戦はもちろん羽生がタイトルを獲得していない「叡王戦」が理想だ。一方の武は「勝ちたいレースとしては凱旋門賞ですね。そのためには、よりレベルアップする必要があります」と語り、コメントも大いに盛り上がった。小籔も「凱旋門賞で勝ったら競馬ファンは絶対泣きます」と応えると武は「マスターズで松山英樹選手が優勝したのを見て感動しました。改めて、自分も絶対凱旋門賞を勝ちたいと思いました」と語り、大いに期待したいところだ。
ここからは、視聴者からの質問を二人が選んで答えたが、その中から爆笑エピソードをピックアップ。
「本業以外で負けて悔しいと思ったことは?」との質問に、羽生は「ほかの勝負事をやっていると複雑な気持ちになる。負けたら悔しいけど、ここで運を使って、将棋に悪影響が出ないか考えてしまう」とのこと。そのため、あまり勝負事はやらないそうだ。一方の武は大の競輪好きで、車券も買うそうだが「外れたときはめちゃくちゃ悔しくて!」と告白。帰りのクルマでもずっとぼやいているそうで、同乗者に「競馬の帰りにそれだけ悔しがっている姿を見たことがない」と言われるほどだとか。おかげ(?)でファンの人たちの気持ちがわかると語っていた。
このことについて、羽生が「競馬の場合は、ものすごい期待を全身に背負うことになり、そのときの心境はどういうものなのか」との問いに、武は「自信があるときは気にならないけど、自信のないときはもったいないというか、複雑な気持ちになりますね」とぶっちゃけ。「ただ、競馬は誰かが外れても誰かが当たっているので、本命馬が負けたときは、今日は穴党に貢献したと都合のいいように思うときがあります」との名言(?)も飛び出した。
いちばん爆笑したのが「対局中や直前にハプニングがあったことは?」の質問に、羽生は「長いことやっていると色々ありますが、停電になったことがあります」と20分程度の中断があったとのこと。さらに「大先輩の加藤一二三先生とA級順位戦を対局中、夜9時ぐらいにチョコレートを爆食いされたことがあり、あまりの速さに驚いたことがありました」と、単なる飲食でもハプニング化してしまうという、ひふみん伝説が炸裂。
一方、武のハプニングとしては、「フランスで騎乗するために競馬場へ行ったら、違う場所へ行ったことがあります」とのこと。たまたま、本来の目的地が近かったためギリギリ間に合ったそうだが、そのことがおもしろくて「誰かに言いたかった」と言うあたりは、肝が座っていてさすがというしかない。
最後は、「コロナの影響もあって、行動するのは難しいですが、1歩前へ進んでみることが大事ではないか」(羽生)、「自分の好きなこと、夢や目標に向かって一生懸命やってほしいですね」(武)と視聴者へのメッセージを残し、32年前に撮影した写真と同じように馬を挟んで撮影タイム。この馬はJRAがイベントなどで展示していた「馬ロボ」で画面越しではあるが、人参をあげている構図をつくり、貴重なスクショタイムとなった。
二人とも探究心が豊富で、おもしろエピソードもあり、あっという間に時間が過ぎ去ってしまった。また近い将来対談してほしいが、そのときは、ユーザーからのコメントにも多くあったように、平成のもう一人の天才、イチローを含めた3人だとさらなる展開で盛り上がるのではないだろうか。
番組の詳細はこちら → https://chokaigi.jp/2021/plan/jra.html
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