サステナビリティへの取り組み

テクノロジーを駆使して 個々の生徒の可能性に向き合う未来の学校
KADOKAWAグループのサステナビリティに向けた取り組み

テクノロジーを駆使して
個々の生徒の可能性に向き合う未来の学校

※タイトル画像は2019年度の卒業式
サマリー
  • インターネットやICTツールを活用した通信制の高等学校として、N高は2016年にスタートし、S高と合わせた生徒数は2万人を超えた
  • たくさんのカリキュラムによって、やりたいことが見つかる、そしてやりたいことにより時間を使える学校として、多くの生徒に選ばれている
  • 地元の町おこしに取り組んだり、アパレルブランドを立ち上げたりするなど、多様な取り組みにチャレンジがする生徒が増えており、学校側もさまざまな取り組みで生徒たちの主体性を伸ばすサポートをしている

学校法人角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校・S高等学校(N/S高)は、ドワンゴが独自に開発した双方向の教育・学習サービスや、VRによる体感型学習サービスを活用したネットの高校です。ネットの高校は、これまでのリアルな高校とはどう違うのでしょうか。そして、N/S高の目指す未来の学びの姿とは、どういったものなのでしょうか?

2016年4月に沖縄県うるま市に開校したN高等学校(学校法人角川ドワンゴ学園)は、パソコン・スマートフォン・タブレットを使い、SlackやGoogle WorkspaceといったIT企業などで使われている最先端のツールを活用しながら、自分のペースで勉強できる単位制・通信制(広域通信制)の高等学校です。学校教育法第一条に定められた高等学校であり、全日制と同じ「高校卒業資格」を取得することが可能で、日々の学習がネットでできるため、日本全国だけでなく海外からも入学できます。

N高では、3つの障壁を超えて、広く教育が受けられます。1つ目は地理的・時間的な障壁。遠くて通いにくい、通学時間が取れない生徒でも、いつでも、どこからでも学習できます。2つ目は経済的な障壁。世帯年収が一定以下の生徒は、国の補助金などを活用することで、学費を3年間で20万円程度に抑えられます。そして3つ目は学力的な障壁。個々の生徒の学習進度に応じて学べるので、さまざまな理由で学校に通えなかった生徒も、必要に応じて小中学校の復習からスタートすることができます。

そういった、すべての人が平等に教育を受けられる環境を充実させるとともに、N高ではネットとリアルを組み合わせた”質の高い教育”の提供に取り組んでいます。今のインターネット社会に対応した新しい教育を展開し、高校卒業の単位を取得するための必修授業以外に、大学受験対策やプログラミング・Webデザイン、職業体験、留学といった多様な学びが用意され、好きなだけ選択して学ぶことができます。

このため、全日制高校に通えない生徒が通う通信制高校としてだけでなく、受験に集中したい、より実践的に学習したい、起業しながら学びたいなどといった多様な理由から、積極的にN高を選ぶ生徒が増えています。その結果、開校当初は1,482名だった生徒数が、2021年4月に新たに開校したS高等学校と合わせて、2万603名まで拡大しました(2021年9月30日時点)。

N高とS高を合わせた生徒数は2万603名まで増加。生徒の居住地分布は、ほぼ人口比率に近いかたちで、全国に広がっている。

「IT×グローバル社会を生き抜く“総合力”を身につけて、世界で活躍する人材を育成するという理念のもとで、今のインターネット社会に対応した新しい、多様な教育を展開しています」(角川ドワンゴ学園 広報 永井美智子)

多様な選択肢を提供するために、N/S高では、大きく4つの学習形態を用意しています。メインとなるのは、年8日間前後のスクーリングを除き、すべてネットで学習する「ネットコース」ですが、全国19か所(2022年4月からは全国20都市・計33か所に拡大)にあるキャンパスへ登校する「通学コース」もあります。

ネットコースだけでなく、通学コースやオンライン進学コースなど、複数のコースが用意されている(2022年1月時点)。
2022年4月に14のキャンバスを新設(図の「NEW」と記載されているところ)して、全国に33キャンバスとなる。

2021年度からは「オンライン通学コース」も開設されました。このコースでは、好きな場所からICTツールを活用して、オンラインでの対面形式のグループワークを繰り返すことで、主体性と行動力を身に付けることができます。そのほか、プログラミングに特化した「通学プログラミングコース」や、VR(バーチャル・リアリティ/仮想現実)技術を使った学びもスタート。生徒同士が交流し、遊べる場として、N/S高共通のネット部活(投資部、起業部、政治部、eスポーツ部、ダンス部、美術部、研究部など)やネット遠足、ネット運動会など、さまざまな活動も行われています。

そして、N/S高通学コース、オンライン通学コースではさまざまな企業や官公庁と連携し、社会の課題の解決に生徒が取り組む課題解決型プロジェクト学習「プロジェクトN」を展開しています。高校生が社会で活躍するための知識やスキルを身に付ける学習プログラムで、2020年には「グッドデザイン賞」も受賞しています。

「プロジェクトによってケースバイケースですが、通常は5~6人でチームをつくり、ひとつのトピックに対して1~3か月かけて、具体的なアウトプットをつくり発表します。“プロジェクトN”を通じ、自分自身で問題を発見して、解決方法を考え、人に伝える力が身についていきます」(永井)

酪農体験(左)や沖縄・伊計島でのスクーリングに際しての、伝統芸能エイサーの鑑賞・実演(右)など、リアルでの多様な体験を得ることも可能だ。

「プロジェクトN」の例としては、2020年11月に農林水産省と連携した「農業遺産を後世に継承する6次産業化アイデア」の企画を考える「農業遺産のミライプロジェクト」のほか、知育玩具やリアル脱出ゲームの企画、オリジナルブランドの洋服の制作など、多種多様な取り組みが展開されています。

2019年4月には、中学生を対象にしたN中等部も開校されました。学校教育法第一条に定められた中学校ではありませんが、N/S高の教育コンテンツを活用した新しいコンセプトの「プログレッシブスクール」です。2022年4月からは、N/S高との連携をさらに緊密にして、生徒一人ひとりの夢の実現のため“12歳からの進路設計”を支援する仕組みを強化していきます。

「多くの生徒は、学園でのいろいろな学びや取り組みをするなかで、少しずつ自分のやりたいことを見つけていきます。さまざまなことにチャレンジするのも、何かに集中して極めるのも、どちらもできるのがN/S高の良さのひとつだと考えています」(永井)

目標とするゴール