サステナビリティ

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  • 編集工程のデジタル化によって 出版コンテンツの制作を持続可能なものに
KADOKAWAグループのサステナビリティに向けた取り組み

編集工程のデジタル化によって
出版コンテンツの制作を持続可能なものに

サマリー
  • KADOKAWAでは、これまで紙で行ってきた出版コンテンツの編集・制作工程を、印刷会社の協力を得てデジタル化する取り組みを進めている
  • 紙の校正ではなく、タブレット端末を使ってデジタルデータで校正を確認し、修正・校了指示を行う
  • コロナ禍で出社が厳しい状況でも、リモートで制作・校了できる体制を整備したことによって、従業員の多様な働き方に対応でき、コンテンツ制作を継続できている

書籍やコミック、雑誌といった出版コンテンツの制作は、これまで、実際の紙面としてデザインした内容(校正)を、紙に出力して確認・修正するかたちで行われてきました。コロナ禍で出社が厳しくなり、作家・編集者・印刷所が紙の校正の受け渡しをして確認する、という従来の工程でのコンテンツ制作が難しい状況のなかで、コンテンツ制作をどうやって持続可能にするのか、という課題への取り組みをKADOKAWAでは進めています。

雑誌や書籍、コミックといった出版コンテンツの制作現場では、これまで、原稿の作成から校正(内容のチェック)、校了(完成)といったそれぞれの工程において、紙に出力した「校正紙」を互いにやりとりして作業を進めてきました。

最終的な製品としては紙の本になるので、制作工程においても、紙に出力したほうが実際の仕上がりに近いかたちで確認できます。ディスプレイで見ていたときには誤りに気づかなかったものも、紙に出力してみると気づく、などといったこともあります。

「紙の校正のやりとりで制作を続けてきた最大の理由は、長年にわたって磨かれ完成された工程なので、変更する必要がなかったからと言えます」(KADOKAWA生産管理局 局長 伊藤正人)

KADOKAWAではいま、こうした制作スタイルを変えて、紙に出力することなく、デジタルデータのやりとりだけでコンテンツ制作ができるような体制づくりを進めています。具体的には、マンガや小説などの原稿はもちろん、印刷会社から出される、実際の紙面と同じレイアウトで絵や文字を並べた校正も、紙ではなくPDFデータでやりとりし、校了までほぼPDFのみで完結するという工程です。

なぜそうする必要があるのか。理由のひとつには、働き方改革の推進があります。KADOKAWAは以前から、時間や場所にとらわれず、自律的に行動する働き方「Activity Based Working」(ABW)の考えを導入した働き方改革を進めてきました。スタッフ一人ひとりの多様な働き方に対応するために、社内・社外、在宅など、場所を問わずどこででも仕事ができる環境や仕組みづくりを行い、その一環として編集・制作工程のデジタル化の準備も以前から進めていました。

これを加速させるきっかけになったのは、新型コロナウイルス感染症の拡大でした。

「2020年4月7日に、東京のほか6府県に緊急事態宣言が発出され、出社が難しい事態になりました。在宅勤務のままではコンテンツが制作できないという状況において、どうすれば編集制作の作業を続けられるか。リモートワークでの原稿作成はもちろん、校了までできる環境の整備が必要になりました。緊急事態宣言発出直後は、それぞれの編集部や制作スタッフは個別現場対応で、在宅での業務継続を模索しました。ノートPCなどの支給は全社的に進んでいましたが、自宅のネット環境強化やタブレットなどのデバイス支給などは想定外だったため、急遽、総務やICTが中心となり環境整備に着手しました」(伊藤)

「コミック雑誌 フルリモート対応フロー」「コミック雑誌 従来校正対応フロー」
原稿入稿以降の工程自体は変わらず、紙の校正をPDFデータへ置き換えることで、デジタル化へのスムースな移行が可能となります。また、校正紙を社内外へ送る際にバイク便や宅配便を頻繁に使っていましたが、これがなくなるため、配送に必要だったエネルギーの消費や温室効果ガスの排出も減らすことができます。

取り組みの具体的な内容ですが、まずは機材面について。編集業務に関わるスタッフに会社指定のタブレット端末を配布し、端末仕様や校正時に使用するアプリケーションなどを統一させることで、機器の条件をそろえました。

そして、すべての編集工程をデジタルデータで完成するように設計しました。上の図はコミック雑誌の例ですが、これまで紙の校正で行っていた編集者と印刷会社、編集者と作家の間のやりとりを、すべてPDFで行います。紙面レイアウトの確認はタブレット上で、また赤字(修正指示)もPDFにペンツールなどで入れて回覧するようにしました。

「紙からデジタルに変えても、なにか工程を減らす、あるいは根本的に見直したり、変えたりはしていませんので、工程自体は基本的に変わっていません。“紙がタブレットに置き変わっただけ”とも言えますが、校正の形態が変わっても工程は変えないことで、関係者は混乱なく移行することができました。その結果として、コロナ禍によって物理的な出社が難しい状況下でも、コンテンツ制作を継続する体制を整備することができました」(伊藤)

編集工程のデジタル化がとくに進んでいるのが、コミック雑誌です。生産管理局では2020年12月に、「コミック雑誌PDFリモートサービス」というガイドラインを策定しました。これはコミック雑誌の編集作業における、完全なリモート工程の実現を目指したガイドラインで、PCやタブレットを使って社内外どこでも作業できる方法を規定したものです。2021年3月までに、KADOKAWAグループ内のコミック雑誌18誌中の14誌で、このガイドラインに沿ったデジタル校正が行われるようになりました。

ガイドラインの整備にあわせて、各編集部がこれまで独自に印刷会社と取り決めていた品質基準についても改めて協議を行い、基準の統一化を図っています。

「KADOKAWAグループとしての統一ルールを制定することが、グループの編集・制作工程のデジタル化だけでなく、出版業界全体の制作工程のデジタル化における先行事例となり、ゆくゆくは業界スタンダードの構築につながると思っています」(伊藤)

先行したコミック雑誌に続いて、一般書籍の制作においてもデジタル化を進めています。さまざまな働き方や生活の状況においても、リモート環境で編集・制作作業が続けられるような仕組みを整備することで、コンテンツ制作そのものの持続可能性を追求しています。

目標とするゴール