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第10回 山中賞受賞!木内昇『かたばみ』 血の繫がらない親子を描く、笑いと涙のホームドラマ

2024年1月16日(火)に「第10回 山中賞」の受賞作品が「なかましんぶん編集長」公式X(旧Twitter)にて発表され、株式会社KADOKAWA(本社:東京都千代田区)より23年8月刊行しました、木内昇著『かたばみ』が選ばれました。

【受賞作発表動画はこちら】
https://twitter.com/NAKAMAshinbun/status/1747198534011805921
【受賞作品について】
★情報ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322110000639/
★試し読み:https://kadobun.jp/trial/katabami/entry-84667.html

高知市の「TSUTAYA中万々(なかまま)店」の書店員であり、フリーペーパー「なかましんぶん」の編集長を務める山中由貴さんが、お客様に「どうしても読んで欲しい」と思った本の中(翻訳書も含め、ジャンルは問わず)から独自に選出する「山中賞」。年に2回、芥川賞・直木賞よりひと足早く発表され、受賞によって販売数が10倍になった書籍も!

【山中由貴さんより、本作に対する熱いコメントを寄せていただきました】

  • ついに今回で10回目を迎えます!ただただ小説が好きではじめた、私、山中由貴が独断で本当に面白かった本に贈呈する山中賞。

    第10回山中賞は、木内昇さんの『かたばみ』です!

    太平洋戦争真っ只中から戦後までのつらく厳しい時代のおはなしとあって、気合いを入れて読まなければ、と身構えてしまったけれど、もうど直球に、笑って泣いて気持ちが晴れやかになる、素晴らしい物語でした!!!

    真面目でがんばり屋の主人公、山岡悌子のとんちんかんな奮闘や、ひ弱でへなちょこな中津川権蔵に何度吹き出したことか。悌子は学校の教員として、何が正しくて何が間違いなのか、手探りで「教育」というものに向き合い、流されるばかりだった権蔵もまた、自分のやりたいことを見つけて生き生きしていきます。ちょっと普通ではないなりゆきで人生を共にすることになったふたりの関係性も素敵です。彼らが、ともに暮らす家族と足りない部分を補い合いながら、大人ひとりが生き延びるのも大変な時代に子どもたちを守り育てていく。その毎日の平凡な営みが、力強くすとんと胸に収まって、ぽかぽかあたたかくなります。

    もちろんいまも戦争はなくならない。

    『かたばみ』では、戦争という「非日常」のなかでも彼らが懸命に「日常」を生きる姿がとても眩しい。だからこそ「日常」の大切さがひしひしと伝わって、涙が出ました。

     あなたにも悌子や権蔵に会いにきてほしい。楽しくて、あったかくて、きっとたくさん元気をもらえると思います。

【受賞の報を受けて、木内昇さんより喜びのコメントが届きました】

  • このたびは、山中賞をいただきまして、ありがとうございました!

    本に携わる仕事の中でも、書店員さんは読者の一番近くにいて、現場の声をもっとも早く正確に把握できる、とても重要な役目を担っておられます。私もこの仕事をはじめてから、書店員さんたちと親しくさせていただく機会を得て、その読書量の多さ、読みの確かさ、書評の見事さなどなどに感銘し、敬意を抱いてきました。それだけに、このたび書店員さんの賞に選んでいただいたことは、とても光栄に思っています。

     「かたばみ」は戦中戦後を舞台に、ある家族を描いた物語です。人生は予期せぬことの連続で、それは戦時中に限ったことではありません。挫折や失恋や病気や介護や天災……自分の描いた理想はないことは誰にも起こります。もちろん日々の楽しみや心温まる交流、なにかを成し遂げた達成感など、光を放つ事柄も人生にはたくさん詰まっているでしょう。

     この小説では、人生に起こる陰ではなく光のほうに心を添わせている人を描きたかったのです。とはいえ、現実に蓋をして、なんでもかんでも前向きに!というのとは違います。起こったことを受け止めながらも、ほんの少しだけ光のほうに体を向けている人たちと言えばいいでしょうか。視点の置き方で、人生の景色は変わってくるような気がしています。

     山中賞を機に、多くの方に本書を手に取っていただければうれしいです。

23年8月の刊行以降、思いっきり笑って泣いて、読後の余韻にどっぷりと浸れる小説として注目を集め、新聞、雑誌、webなどのメディアでも続々と紹介されている本作品。この度の受賞を記念し、1月16日(火)よりKADOKAWA文芸WEBマガジン「カドブン」にて試し読み企画がスタートしましたので、ぜひチェックしてみてください。

★試し読み:https://kadobun.jp/trial/katabami/entry-84667.html

  • 受賞作『かたばみ』について                          

「家族に挫折したら、どうすればいいんですか?」

血の繫がらない親子を描く、笑いと涙のホームドラマ

◆あらすじ

太平洋戦争の最中、故郷の岐阜から上京し、日本女子体育専門学校で槍投げ選手として活躍していた山岡悌子(やまおか・ていこ)は、肩を壊したのをきっかけに引退し、国民学校の代用教員となった。西東京の小金井で教師生活を始めた悌子は、幼馴染みで早稲田大学野球部のエース神代清一(じんだい・せいいち)と結婚するつもりでいたが、恋に破れ、下宿先の家族に見守られながら生徒と向き合っていく。やがて、女性の生き方もままならない戦後の混乱と高度成長期の中、よんどころない事情で家族を持った悌子の行く末は……。

※「かたばみ」 カタバミ科の多年草。クローバーのような葉を持ち、非常に繁殖力が強く、「家が絶えない」に通じることから、江戸時代にはよく家紋にも用いられた。花言葉は「母の優しさ」「輝く心」など。

◆書誌情報

作品名:かたばみ

著者名:木内昇

発売日:2023年8月4日(金)★電子書籍同日配信

定価:2,585円(本体2,350円+税)

頁数:560頁

装丁:鈴木成一デザイン室

装画:伊波二郎

体裁:四六判並製 単行本

ISBN:9784041122532

発行:株式会社KADOKAWA

初出:北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞、神戸新聞の各紙に2021年8月から2023年2月まで順次掲載

  • 著者プロフィール                               

木内 昇(きうち のぼり)

1967年、東京生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。11年に『漂砂のうたう』で直木賞を、14年に『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞の3つの賞を受賞した。本書は、新聞連載時から話題沸騰となった家族小説である。他の作品に『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『火影に咲く』『化物蝋燭』『万波を翔る』『占(うら)』『剛心』など。

  • 「山中賞」過去の受賞作                           

第1回 横山秀夫著『ノースライト』(新潮社)
第2回 ソン・ウォンピョン著/矢島暁子訳『アーモンド』(祥伝社)
第3回 ディーリア・オーエンズ著/友廣純訳『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)

第4回 太田愛著『彼らは世界にはなればなれに立っている』(KADOKAWA)

第5回 阿部和重著『ブラック・チェンバー・ミュージック』(毎日新聞出版)

第6回 中島京子著『やさしい猫』(中央公論新社)

第7回 テイラー・ジェンキンス・リード著/浅倉卓弥訳『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』(左右社)

第8回 古谷田奈月著『フィールダー』(集英社)

           ピップ・ウィリアムズ著/最所篤子訳『小さなことばたちの辞書』(小学館)

第9回 川上未映子著『黄色い家』(中央公論新社)

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