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【第14回山田風太郎賞】
前川ほまれ『藍色時刻の君たちは』(東京創元社 2023年7月)
【選考委員】
朝井まかて、恩田陸、貴志祐介、筒井康隆、夢枕獏(敬称略・五十音順)
第14回山田風太郎賞の選考会及び記者会見は、会見場への参加、テレビ会議システム「Zoom」での参加、双方に対応した形式にて実施しました。
代表して選評を述べた貴志祐介氏は、「とても素晴らしい作品を山田風太郎賞の歴史の中に刻むことができてよかった」「現実が一番辛く恐ろしいということを教えてくれて、かつそれにとどまらず、その先にある希望というものをきちんと描いている」と話しました。
この日の記者会見で前川氏は、「嬉しくて今でも信じられない」「今回、ヤングケアラーをテーマに取材する中で、地元(宮城県)の風景が浮かんだ。大人になったヤングケアラーの子どもたちがどういうふうに生きているのか、ということと、もともと書きたかった震災(東日本大震災)のことをあわせて書いた」と感謝の言葉ともに作品に対しての思いを語りました。
前川氏には、正賞として記念品(名入り万年筆)と副賞 100万円が贈られます。
本賞の贈賞式および祝賀会は11月22日(水)に、いずれも東京會舘にて開催します。角川三賞として、本賞と、『第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞』『第14回小説 野性時代 新人賞』(主催:株式会社KADOKAWA)の贈賞式・祝賀会も、あわせて行います。なお、選評は『小説 野性時代 特別編集 2023年冬号』に掲載予定です。
(『山田風太郎賞』公式HP https://awards.kadobun.jp/yamadafutaro/)
【前川ほまれ『藍色時刻の君たちは』 あらすじ】
2010年10月。宮城県の港町に暮らす高校2年生の小羽(こはね)は、統合失調症を患う母を抱え、介護と家事に忙殺されていた。彼女の鬱屈した感情は、同級生である、双極性障害の祖母を介護する航平と、アルコール依存症の母と幼い弟の面倒を見る凜子にしか理解されない。3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ、誰にも助けを求められない孤立した日常を送っていた。
しかし、町にある親族の家に身を寄せていた青葉という女性が、小羽たちの孤独に理解を示す。優しく寄り添い続ける青葉との交流で、3人が前向きな日常を過ごせるようになっていった矢先、2011年3月の震災によって全てが一変してしまう。
2022年7月。看護師になった小羽は、震災時の後悔と癒えない傷に苦しんでいた。そんなある時、彼女は旧友たちと再会し、それを機に過去や、青葉が抱えていた秘密と向き合うことになる……。
(東京創元社 書誌ページより http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488028985)
【著者略歴】 前川ほまれ(まえかわ ほまれ)
1986年生まれ。宮城県東松島市出身。看護師として働くかたわら、小説を書き始める。2017年「跡を消す」で第7回ポプラ社小説新人賞を受賞し、翌年『跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング』を刊行しデビュー。2019年刊行の『シークレット・ペイン 夜去医療刑務所・南病舎』は第22回大藪春彦賞の候補となる。その他の著書に『セゾン・サンカンシオン』がある。現在も看護師としての勤務を続けながら、執筆を行っている。