【第13回山田風太郎賞】小川 哲『地図と拳』(集英社 2022年6月)【選考委員】朝井まかて、恩田陸、貴志祐介、筒井康隆、夢枕獏(敬称略・五十音順)
第13回山田風太郎賞の選考会及び記者会見は、新型コロナウイルス感染症の情勢を考慮し、会見場への参加、テレビ会議システム「Zoom」での参加、双方に対応した形式にて実施しました。
代表して選評を述べた朝井まかて氏は、「
満場一致で決まりました。選考委員が刺激を受けた・面白いと感じた所がそれぞれ異なっていたのも特徴的でした。」「
壮大なる歴史小説、戦争文学として、非常に高度な成果を得た作品。日露戦争前夜から第二次世界大戦までの複雑な時代を舞台に、戦争の力学と人間を描き出していました。」と話しました。
この日の記者会見で小川氏は、「
非常に光栄です。<山田風太郎>の名前を冠した賞をいただくという事は、小説を書く者として襟を正さねばという思いになります。」「
読んでくださる方になるべく密度濃く、なるべく楽しんでもらえるように、頭をフルに使って汗をかいて書いていきたい。」と感謝の言葉ともに今後の執筆活動への意欲を語りました。
小川氏には、正賞として記念品(名入り万年筆)と副賞 100万円が贈られます。
また、本賞の贈賞式および祝賀会は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を考慮し、11月25日(金)に都内にて関係者のみで規模を縮小しておこなう予定です。なお、選評は『小説 野性時代 特別編集22年冬号』に掲載予定です。
(『山田風太郎賞』公式HP
https://awards.kadobun.jp/yamadafutaro/)
【小川哲著『地図と拳』あらすじ】
「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。
ひとつの都市が現われ、そして消えた。
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。
(集英社 書誌ページより
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771801-0)
【著者略歴】 小川哲(おがわ さとし)
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。2015年に『ユートロニカのこちら側』が第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。18年に『ゲームの王国』が第38回日本SF大賞受賞、第39回吉川英治文学新人賞候補、第31回山本周五郎賞受賞。19年に『嘘と正典』が第162回直木三十五賞候補。ほかの著作に『君のクイズ』など。
【山田風太郎賞】
「山田風太郎賞」は戦後日本を代表する大衆小説家、故山田風太郎氏の独創的な作品群と、大衆性、ノンジャンル性、反骨精神など氏が貫いた作家的姿勢への敬意を礎に、有望な作家の作品を発掘顕彰するために創設しました。毎年9月1日から翌年8月31日までに刊行された長編および短編の文芸作品(ミステリ、時代、SFなどジャンルを問わない)の中より最も面白いと思われる作品に贈ります。新人、新進、中堅作家の作品が対象となります。
【第13回山田風太郎賞 最終候補作品】※敬称略・著者五十音順
浅倉 秋成『俺ではない炎上』(双葉社 2022年5月)
小川 哲『地図と拳』(集英社 2022年6月)
砂原浩太朗『黛家の兄弟』(講談社 2022年1月)
蝉谷めぐ実『おんなの女房』(KADOKAWA 2022年1月)
早見 和真『八月の母』(KADOKAWA 2022年4月)