STORY 01 “紙×電子”の一大キャンペーン
「ニコニコカドカワ祭り2020」

紙と電子の相乗効果で、
出版ビジネス&
書店ビジネスの
新たな形を構築する

デジタルマーケティング、宣伝、リアル書店営業、
電子ストア営業の
4つの視点からこのプロジェクトへの関わり方をお伝えします。

プロジェクト概要

出版業界を盛り上げようと、2014年にスタートした読者還元キャンペーン「ニコニコカドカワ祭り」。毎年恒例の“お祭り”が2020年、大幅なリニューアルとパワーアップを果たした。〈KADOKAWAの全書籍・全雑誌を対象に、購入金額の50%(全員) or 10倍(抽選)を還元〉、〈紙の本を買うと電子書籍がもらえる〉、〈『KADOKAWAアプリ』で表紙をかざせば『読書メーター』の感想・レビューが見られる〉、〈書店に行けば「涼宮ハルヒ」のAR特別動画を楽しめる〉、〈推し書店総選挙〉など、多様な機能を持つグループ各社の力も活かしたKADOKAWAならではの施策の数々。ユニークで盛りだくさんの太っ腹キャンペーンはSNSでも話題となり、多くの人が電子ストアのみならず書店に足を運んだ。電子書籍の拡販に貢献するだけでなく、紙の本やリアル書店が持つ可能性を開花させる一歩も踏み出し、出版業界に明るい話題をもたらした。

ニコニコカドカワ祭り
2020

2020年で7回目を迎えた「ニコニコカドカワ祭り」。
『BOOK☆WALKER』、『KADOKAWAアプリ』、『読書メーター』などと連動し、KADOKAWAにしかできないキャンペーンを実現。公式Twitterアカウントは、1万8000フォローを獲得(2020年12月時点)。各書店・電子ストアの売上げ拡大に大きく貢献した。

MEMBER 01 SHINJI KAJINO

デジタルマーケティング 楫野晋司

PROFILE:小学生時代、授業を抜け出しては図書室に忍び込み本を読みふけっていたほどの本好き。なかでも夏目漱石の『門』(角川文庫)は人生を支える一冊。今でも年に数度は読み返すという。新卒で入社した出版取次会社を経て、2011年KADOKAWA(当時:角川グループパブリッシング)へ。以来、一貫してマーケティング領域の仕事に従事。KADOKAWAアプリのローンチに従事したのち、20年度よりデジタルマーケティング担当に。「ニコニコカドカワ祭り2020」の統括を担った。

書店ビジネスのDXを推進せよ。

「ニコニコカドカワ祭り」がスタートしたのは、2014年。“電子を読む読者と紙の本を読む読者の双方を誘客する”、そして“読者にしっかり還元する”という軸で業界を盛り上げていこうと、毎年取り組みを重ねてきました。2014年はKADOKAWAとドワンゴが経営統合した年でありますし、キャンペーンの名前に“ニコニコ”とも入っている通り、デジタルの活用は当初からプロジェクトの根っこにあった思想であったと思います。実際、“紙から電子へ”という時代の潮流もありましたが、電子書籍市場の盛り上げには確かに貢献してきたと感じます。しかしながら、紙の本、リアル書店への貢献という点では、「業界を盛り上げている」と言えるほどの成果をあげるに至っていなかったのが実情だったと思います。そして迎えた2020年。新たな「ニコニコカドカワ祭り」を企画するタイミングで私が感じたのは、「紙の本と書店にはまだまだ大きな可能性が秘められている。それを開花する施策を打ち出さなければ」ということでした。なぜなら、他業界と比較し紙の出版ビジネスはデジタル活用という面で立ち後れていると言わざるを得ない状況だったからです。手つかずだからこそ、爆発的な成果を生み出せる余地が存分にあるはず。そうして2020年度は、電子書籍市場の活性化にとどまらず、“書店のDX(Digital Transformation)”推進で、“紙×電子”の相乗効果を創出。書店ビジネス・出版ビジネスの進化に貢献しようという大方針を固めました。

グループの総力を活かし、
KADOKAWAにしかできないことを。

企画段階では、書店営業、マーケティングなど各部署からメンバーを募り、多くの意見とアイデアを収集。紙×電子のハイブリッド施策という大方針のもと、皆で具体策を考えていきました。そうして生まれた施策の数々はすべて、KADOKAWAでしかできないものだったと言えます。「紙を買うと電子がもらえるキャンペーン」は『BOOK☆WALKER』がなければできませんでしたし、書籍購入額に応じたポイント還元も、『KADOKAWAアプリ』との連携で実現。アプリで本をかざすと感想・レビューが読める『読書メーター』もグループ企業の運営です。ちなみにこの機能は、コロナ禍で立ち読みが敬遠されるなか、立ち読みしなくても情報収集できると好評でした。

今のコンテンツ業界は、
“売る・届ける仕事”が
どんどん面白くなっている。

世の中ではあらゆるものがデジタル化され、「アナログからデジタルへ」と言われています。でも私たちは、違う考えを持っています。「“紙×電子”へ」。KADOKAWAは、各書店とともにDXを推進し出版ビジネス、そして書店ビジネスを再構築して未来に向けた進化を果たしていきたい、そんな想いを抱いています。 今、コンテンツを“売る・届ける”という仕事が本当に面白くなっています。出版においては、例えばデジタルに置き換わることで絶版という概念が消えつつあります。それはつまりコンテンツがロングテール化していることを意味しています。過去からの膨大な作品群と一人一人のユーザーをつなぎ合わせるマーケティングの仕事には、大きな白地が広がっているのです。新たな思考の余地、実験の余地、進化の余地に溢れているこの領域は、これからもっと面白くなりますよ。

MEMBER 02 KAORI

宣伝 香織

PROFILE:学生時代は寝る間を惜しんで、ケータイ小説やソーシャルゲームに勤しむ日々だった。新卒ではモバイル業界へ。ソーシャルゲームやWebサイトの制作ディレクターを経験。その後2016年、KADOKAWAへ。デジタル活用を得意領域に、あらゆるコンテンツの宣伝・プロモーションを担っている。「ニコニコカドカワ祭り」ではSNS活用やWeb広告のプランニング、運用を担当。

デジタルのチカラで、
“好き”を拡げる。

「ニコニコカドカワ祭り」は昨年まで、Web広告やSNSマーケティングにほとんど予算をかけてきませんでした。しかし今回、統括の楫野さんから声がかかり、KADOKAWAとしても大規模なプロモーション予算を確保。大きく施策を仕掛けることに。広告を出稿するにあたっては、「ニコニコカドカワ祭り」を知らなかった人にも分かりやすく、魅力的に映るよう一字一句にこだわりました。SNSとも連動し、「Twitterプロモトレンド」という一日一社限定の影響力の高い広告枠も利用。結果、キャンペーンの特設ページは前年と比較し551%ものPVを獲得。『KADOKAWAアプリ』のダウンロードも400%(昨対)と大きく伸張し、公式Twitterアカウントは開始2か月で1.5万フォロワー(2020年12月時点、1.8万フォロワー)を獲得。大きな反響を得ることができました。今回のプロジェクトを通じてあらためて感じたのは、「KADOKAWAは前例のない新しい取り組みでも本当にスムーズに事が運ぶ」ということ。デジタルへの理解も全社的に高く、柔軟性とスピード感がある。前職でモバイル関連の会社にいた私ですが、ここ数年は特にそう感じています。加えてプロモーションの仕事は、「こんな面白いものがあるよ!」と多くの人に伝えることが役割。「自分の好きなものを誰かにおすすめするのが楽しい」という人にとっては、心から楽しめる仕事だと思います。

MEMBER 03 SHINGO TAKEMOTO

営業(リアル書店担当) 竹本慎吾

PROFILE:学生時代は、マンガに小説と紙コンテンツに没頭。なかでも『ダ・ヴィンチ・コード』(角川書店)の面白さは衝撃的で分厚い上下巻を2日間で読破したことも。大学卒業後、人材業界、医療業界を経て2012年、「他業界にいても厳しい状況にあると知っていた出版業界で、業績を伸ばし続けている理由を知りたい」とKADOKAWAへ。現在は、書店向け営業担当として、各書店法人・店舗と二人三脚で販売企画の立案・実行、商品提案などを行っている。

各書店と運命共同体になって、
新しい未来をつかみとる。

「ニコニコカドカワ祭り2020」の特長は、リアルの書店に対し「紙×電子」をより戦略的に強く打ち出した、ハイブリッドな施策であることでした。「書店と一緒になって業界を盛り上げたい」という思いのもと、読者が書店に足を運ぶことで得られるメリットが豊富に用意されていました。2020年はコロナ禍の影響で売上げの落ち込みを心配されていた書店も多かったのですが、蓋を開けてみれば賛同していただいた各書店のキャンペーン開催時の売上げはとても好調。読者との強い“タッチポイント”としても、リアル書店の存在は 非常に重要なのだとあらためて証明することができたと考えています。昨今では、“デジタルインフルエンス”という言葉も注目されていますが、「情報収集はオンライン上で行い、実際の購入は実店舗で」という消費行動が書籍の世界に限らず増えています。書店にはまだまだ多くの可能性が秘められているのです。それをどれだけ大きく開花させることができるか。その第一歩を今回の「ニコニコカドカワ祭り」で踏み出すことができたと感じます。ですが、まだまだこれから。書店ビジネスも書籍ビジネスももっと進化できるはずですし、その起爆剤になれるのはKADOKAWAであると私は思っています。常識や既成概念に縛られず、新しいテクノロジーも吸収しながら変化していけるのがKADOKAWAの強み。各書店と運命共同体のような関係を築き、一緒になって新しい未来を掴んでいきたい。そう思っています。

MEMBER 04 HITOMI ONUMA

営業(電子ストア担当) 大沼ひとみ

PROFILE:本の虫の母親のもと、マンガや小説に囲まれて育つ。大人になるにつれサブカルチャー全般に興味を持つようになり、本人曰く、オタク街道まっしぐらだったという。新卒では、電子書籍配信ソリューションを開発する企業に入社。電子取次営業や電子ストア編成業務を経験。その後、「コンテンツホルダー側で仕事がしてみたい」と、2017年KADOKAWAへ転職。各電子書籍ストア・プラットフォーム企業に向けた営業活動に従事している。

自社内で実験できる環境があるから、
斬新なチャレンジも躊躇なくできる。

電子書籍ストアと連携した施策で一番ユニークだったのが、「紙を買うと電子がもらえるキャンペーン」でした。前例のない初めての取り組みでしたから、お取引先である電子ストアといきなり挑戦するのはハードルが高い。ですがKADOKAWAには『BOOK☆WALKER』があります。自社プラットフォームを活用することで、この新しいキャンペーンが実現しました。まずは自社内で実験し、結果を得てから広く展開することができる。そんな環境がここにはあるんです。斬新な施策もスピード感を持って柔軟に試すことができるのは、KADOKAWAならではですね。結果的に、コロナ禍の巣ごもり需要の高まりもありましたが、各電子ストアともに「ニコニコカドカワ祭り」の売上げ目標を達成。各社から「手応えを感じている」という声もいただきました。
営業という仕事は、オタク界でいうところの布教活動に近いものがあると思っています。自分の好きなもの、面白い!と思ったものを広め、「こんな作品があったんだ!」と多くの人に感じてもらう。その快感は何にも代え難いものです。過去のやり方にとらわれないKADOKAWAでこれからも、今はまだない新しい布教の仕方を編み出していきたいと思っています。

※記事内容は、取材当時(2020年12月)のものです。